劇場公開日 2018年9月1日

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「若い時にしか作れない作品がある」あみこ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5若い時にしか作れない作品がある

2020年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

作家の初期衝動が強く刻印されている作品はそれだけで面白い。完成度うんぬんの前にその衝動がどこに向かうのか予測がつなかい無軌道さがスリリングだし、見たことのないものを見せてくれそうな期待感があるからだ。これはまさにそんな映画で、山中瑶子監督が二十歳の頃にしか作れなかった作品だろう。
主演の春原愛良がすごく良い目をしている。カメラをにらみつけるあの表情は、観客を吸い込む力がある。将来の展望のないあみこという女子高生が一人の同級生に恋心を抱くが、振り向いてもらえない。青春映画として当たり前のようなプロットなのに、独特さがディテールににじみ出る。スパゲッティとレモンをがっつかせてみたり。
舞台は長野をメインに後半は男の子を追いかけ、東京に出てくるあみこを描いているが、シナリオを書き切る前に東京の撮影を開始したらしい。この東京編の物語の無軌道さが、あみこの無軌道さと奇跡的にマッチしていて引き込まれる。あにこは、なぜ道行く人と唐突に踊りだすのか。意味などない、それは「純粋にそういう衝動があったから」踊ったとしか言えない。だから、面白い。意味や役に立つことなど考えない。現代への反抗として最も優れたやり方だ。

杉本穂高