あまねき旋律(しらべ)のレビュー・感想・評価
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知られざるインド北東部の文化
インド文化の多様性をかいま見れる貴重なドキュメンタリー映画。インド北東部ののナガランドは国際的には長く続く独立闘争で知られるが、その文化はほとんど知られていない。2人のインド人監督による本作は、政治的複雑さは背景にしながら、ナガランドの農村の労働歌にスポットをあてる。「リ」と呼ばれる不思議な歌を歌いながら稲作をする伝統があるこの地域で、人は歌いながらコミュニケーションし、働く。田園風景は美しく、歌が山に響き渡る絶景に感動する。
意外にもキリスト教信者が多く、賛美歌も独特のアレンジがなされている。インドでキリスト教が中心のコミュニティがあることを恥ずかしながら知らなかった。
この地域の人々は人種的にはモンゴロイドで日本人に近い外見をしている。時折旅行ブログなどで、ナガランドを訪れた人のブログを読むと、同胞だと思われることもあるとか。
ナーガの記憶
名古屋初日となる、映画『あまねき旋律(しらべ)』を、シネマテークで観てきました。
久しぶりに映画を見に来れたのも、ずっと仕事が忙しくこんなんやってられるかってなったタイミングで、この映画こそ今見るべきベストな流れで気づいたら目の前にスクリーンがあった感じです。
民俗学や民族音楽的にも貴重な映像だったと思いますが、そういった視点は専門家の方々に任せておき、とにかく映画の間ずっと流れてくる「あまねき旋律」があまりにも心地よく、魂レベルで聴き入ってしまいました。
山の谷間に広がる美しい棚田に響き渡るその歌というか音楽は、遠き記憶の歌垣であり、輪踊りであり、郡上白鳥の拝殿踊りや石徹白民謡や、郡上一帯の農作業の田植唄などに通じるものがある。
長閑でありながら緊張感のある、輪唱のユニゾンやリズム。
かつて、稲作がやってきた道にもあったであろう風景が。
アジア一帯も、アフリカも、大陸がずっとつながってた頃からある、もしかしたら言葉より古いのがこうした歌だったと思う。
映画を見て行きたくなった国や土地はよくあるけど、そこで歌われている唄の中に自分も入ってみたくなったのは、後にも先にもこの映画だけ。
だけど、歌や音楽だけがこの映画のよさじゃない。
草が生い茂る大地と一体化し、土を起こし、水を引き込み、田植えして、収穫する、その一連のプロセスの中に歌があり、そっちの方にもググッと引き込まれました。
わたしも田んぼの手植えを20年近くやって、田んぼを通じた季節ごとの風景を目にしてきて刻まれた何かと響き合うような、そんな琴線に触れる映像だったのです。
土と水、大地と共に生きる力強さ。
それが歌のエネルギーにもなっている。
アイヌのウポポとかもそうだと思うけど。
だから田植唄や農作業に限らずもっともっと古い時代から、海を渡っていた時代にも船の上で歌ってた記憶がよみがえってきた。
この地域の民俗学というより、日本に世界の古いものが保存されたように、海から来た人がたどり着いたかもしれないこの陸の孤島にも、何千年何万年単位の記憶が温存されてるのかもしれない。
インドでもない中国でもないこのナガ族とは、ナーガの龍蛇族という、太古の記憶を秘めてると思うから。
映画じゃない
ゆったりと見られるドキュメンタリー。その地に降り立ったような気がした。
「幸せとは何か?」
ブータンやミャンマーと同じく、この地域について住んでいる人々の表情と話し振りで、日本で暮らしている私も考えさせられる映像です。
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