劇場公開日 2018年11月24日

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「塚本晋也監督は、何故に海外の評価が高いのか を少しだけ考えてみる」斬、 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0塚本晋也監督は、何故に海外の評価が高いのか を少しだけ考えてみる

2019年10月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

 誰もが知っている事だが、塚本監督作はエンタメ色は薄い。
 古い言葉で言えば、「日本アート・シアター・ギルド(ATG)」の色合が強いと私は思う。

 (ATGは初期のアート系作品から後期はヒットした「家族ゲーム」を生みだしながらも、徐々に衰退した。が、その後の邦画を担う多くの映画人を育てた功績は大きい。)

 だが、塚本は初期傑作「鉄男」から、アート系の色合いの強さはそのままに、その類稀な映像美で世界レベルの審美眼を持つ人々に熱狂的に受け入れられた。
 私は彼が海外のアート系映画祭で受け入れられた要因はその特異な映像美であると考える。

 そして、この作品である。

 時代は江戸最後期、舞台はほぼ寒村。その寒村を襲う、無頼者たち。志を遂げるために腕の立つ剣士を探す塚本演じる剣客、澤村次郎左衛門。
 若き剣士都築杢野進(池松壮亮)と寒村の娘ゆう(蒼井優)と侍になりたい弟、市助との関係性が淡々と描かれる。

 そのトーンから一転して、澤村と都築の腕試しのシーンの迫力や澤村が無頼者たちを無表情に切り捨てるシーンの残酷ながらも魅入ってしまう妖しげな美しさ。

 杢野進とゆうの壁超しの指吸いシーンのエロティックな美しさも忘れ難い。

 塚本晋也の監督・脚本・撮影・編集・制作 という一人でどこまでやるの?という部分も含めて、塚本ワールド全開であるし、その特異な暴力的な映像美が海外では評価されるのであろうなあ、と思った作品である。

<2018年12月6日 出張先にある映画製作に熱心な街のミニシアターにて鑑賞>

NOBU