「平和維持のための武力は本当に必要か」斬、 とえさんの映画レビュー(感想・評価)
平和維持のための武力は本当に必要か
ズシリと重厚感のある映画だった
江戸時代末期
時代が変わろうとしている時
武士としてのあり方に葛藤する若い浪人と、その周りの人々の思いを描く
この映画で問われるのは
「正義のために暴力は必要かどうか」である
ちょっとした小競り合いで殴られた仕返しに人を斬り
「もう手出しはしてこないだろう」と思っていたら、相手は、さらに多くの人数を送り込み、さらに凶暴になっていく
それは、近年の「テロで国民が犠牲になったから」と言って、その報復のために
「テロリストが潜伏しているであろう」と思われる国へ戦争を仕掛ける構図とよく似ている
もう手出しをさせないために、強さを見せつけるように彼らはテロ支援国家に爆弾を落とす
しかし、その結果、本当にテロが減るかと言えば、そうではないことを世界中の人たちが知っている
その「武力が平和を生み出すのか」という問題の中で、この映画では、
池松壮亮演じる浪人 杢之進が「人を斬れない」ことで葛藤する
武士として人を斬れないなんて致命的だ
しかし、本当に人を斬る必要なんてあるのだろうか
そうして、映画は、
暴力か、非暴力かを観客に問いかける
そこで私が思ったのは、
これまでの時代劇は
たとえ武士という職業だったとしても「人を斬る」という行為をあまりにも軽く考えていたんじゃないかということ
杢之進のように、葛藤して、悩んで自分を見失ってしまうぐらいが
リアルに人間らしい姿ではないのかということ
そもそも、ならず者たちは斬るべき者たちだったのか
本当に愚かな人間とは、人の命よりもプライドや面目に重きを置く者ではないのか
報復に次ぐ報復を繰り返していては、世界に平和はやってこない
それこそが、塚本晋也監督の思いではないかと思う
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