劇場公開日 2019年4月19日

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「一見共感できないように見える人物が愛おしくなる、切なくてショッパイ群像劇」愛がなんだ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0一見共感できないように見える人物が愛おしくなる、切なくてショッパイ群像劇

2019年10月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公はアラサーの会社員山田テルコ。大して親しくもない友人の結婚式二次会で声をかけられた守に何となく惹かれる。最初は手が綺麗な人程度の印象だったはずの守がテルコにとって何者にも代え難い存在となっていくが、守にとってテルコは友人以上恋人未満。ある夜をきっかけにテルコは守に急接近出来たと確信するがその日を境に守からの連絡は途絶え、テルコの生活が荒み始める。

ほぼ20年くらい前に観たブレット・イーストン・エリスの原作を映画化した『ルールズ・オブ・アトラクション』を思い出しました。登場人物の誰もが誰かに惹かれているがその想いがどれも一方通行で誰一人満たされない切なさがよく似ていますが、本作はさらにその先を見つめているかのような世界観。テルコと守、テルコの親友葉子と彼女にいいように振り回されている仲原、守が夢中になっている予備校の事務員すみれ、皆それぞれ自分勝手に振舞って自分のことは棚に上げてガンガンぶつかり合うが、それはそれぞれ他人との丁度いい距離が異なるからで、自分にとって居心地のいい場所に居座ることが相手にとって不快だったり、良かれと思ってやったことが鬱陶しかったり。そんなあるあるがぎっしり詰まっているのでその中でもがいている彼らの誰も嫌いになれず、皆愛おしく思えます。人には色んな面があるという当たり前のことをつぶさに見せて、一見共感出来ないように見える人物の心情もぐっと胸に染みる辺りは『スリー・ビルボード』にも似ています。

個人的には陽子に寄り添う仲原君がどこまでも透き通った瞳で言い放つ「幸せになりたいっすね!」と言う一言に胸を引き裂かれるような思いを感じて泣きました。かつての自分も彼と同じような思いで人と向き合っていた、忘却の彼方にあった記憶まで無造作に引きずり出されて大変迷惑でした。要するに傑作です。

よね