「ロックスターなんてこんなもの」エリック・クラプトン 12小節の人生 Sun Eastさんの映画レビュー(感想・評価)
ロックスターなんてこんなもの
昨今流行りの音楽映画やコンサートフィルムを期待していた人には長くて退屈な映画だったろうし、恋に敗れて酒とドラッグに溺れた男が不屈の精神で蘇る涙と感動の物語を期待していた人には中途半端な出来の悪い駄作と映っただろう。
リアルタイムでクラプトンを聴いてきた世代は60歳以上だろうか。私も含めたそれらオールドファンにとっては、時代を反芻できたし、往年のスターたちのフィルムを観ることが出来たし、コード進行が分かるくらいに聴き込んだ挿入歌が多く、楽しめた。
横恋慕したパティーって結構いい女だったんだなぁとか、クラプトンは面食いだったのかとか、ジャガーもヘンドリクスもメイオールもみんなラリっててたんだなぁとか、黒人ブルース・シンガーのプライドは相当高かったのだなぁとか、この頃のマーシャルのアンプ欲しいなぁとか、いろいろ考えながら観ると飽きない。
ただ、これはあくまでもクラプトンという人間の生きざまを綴ったドキュメンタリーである。音楽を楽しもうなんて期待は抱かない方が良いし、この手のドキュメンタリー・フィルムを作成するなら日本のNHKが一番上手いだろう。外国産は本当にピント外れで下手くそだ。
後半、クラプトンが薬や酒に溺れていく様が執拗に描かれており、ダメ男ぶりが描かれているが、当時のロックシーンを考えるとハード・スケジュールと毎夜の乱痴気騒ぎが続いていたわけで、ある意味クラプトンは人間らしい弱さを持っていたんだと思う。結局、彼を救ったのは何人もの女性達だった。
音響は良く、演奏シーンは迫力があって楽しめた。特にBBキングのインタビューのバックに「Cross Road」(Live)が流れるが、何度も聴いたこの演奏がとりわけ光り輝いた。日本人ギタリストでこれを完コピしたと自慢するマヌケがいるが、聴いてみると鼻くそほどにも届いていなかった(ア、チャー)。それほど凄まじいソロだった。
万人向けではないが、オールドファン、ブルース・ロック黎明期に興味のある方々にはお勧めしたい。