劇場公開日 2018年10月6日

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「重厚な演技、巧みな演出に酔う」LBJ ケネディの意志を継いだ男 しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5重厚な演技、巧みな演出に酔う

2018年11月5日
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「スタンド・バイ・ミー」などで知られるロブ・ライナー監督の最新作。

昨年の「ジャッキー」など、ケネディ暗殺の「周辺」を描く映画というのは、たびたび出て来る。
本作はケネディ大統領のもとで副大統領を務め、ケネディの死後、大統領に就任したジョンソンを描いている。

ジョンソンは南部出身のパワフルな政治家。スマートなケネディとは正反対だ。
院内総務という、日本で言う国対のような役職を務め、地味ながら政治力を持っている。
ジョンソンは始め、民主党内で大統領候補としてケネディと戦うが、ケネディに敗れる。ところがケネディはジョンソンを副大統領に指名する。政権外に置いて敵対されるよりも、中に置いて無力化することがケネディの目的だった。
ところがケネディ暗殺で何もかもが一変する。ジョンソンもケネディ陣営も。大統領暗殺という異常事態に、政府中枢がどのように動いたか、というところが描かれていて興味深い。

本作のクライマックスは、議会でのジョンソンの演説シーンだろう。ジョンソンは、ケネディへの追悼を表しながら自らの抱負を語る、という難しい演説をしなければならなかった。
そういえば「ウィンストン・チャーチル」も同じく、演説がクライマックスだったことを思い出し、欧米の政治家は言葉がキモなんだな、と改めて思い、日本の政治家の名演説ってあったっけ?と考え、暗くなる。
そして、この演説シーンが素晴らしい。この映画を観始めてからのすべてが、ただ一点に収斂する瞬間が味わえる。

本作は一言で言えば政治劇だ。登場人物はほとんどがスーツ姿のおじさんだし、派手なアクションがあるわけでもなく、セリフも堅い。
かつて司馬遼太郎は「政治とは感情である」と書いた。
この作品、ほとんど会話シーンだけで登場人物の感情の動きを細やかに描いていて、主演のウッディ・ハレルソンらの重厚な演技とベテラン監督の巧みな演出にたっぷり酔える。

しろくま