「おとぼけカップルの幸薄劇」スマホを落としただけなのに(2018) movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
おとぼけカップルの幸薄劇
警察は地上戦に強いと聞いたことがある。
防犯カメラに一度映れば、地上にいる限りどこまでも警察は追えるらしい。
でも、ネット上で複雑化、凶悪化していくサイバー犯罪には、犯人と紙一重の思考を持つ者でないと太刀打ちできないのであろう。千葉雄大グッジョブ!
実際は見つけた犯人もトカゲのしっぽと言うことが大半だろうから、本作内のように犯人が個人的欲求丸出しで直接被害者に接触する例は珍しいのではないか?
作品にするために、事件を単純化していると思わざるを得ない。一応、なりすましさせられた犯人が捕まったり、バカリズムが疑われたりのくだりはあるのだが。
ちょっとうっかりスマホを落としたり抜けてるところがあって、結婚を危ぶむほどアホなのかもと思わせて、そうでもない田中圭演じる富田と、賢く思慮深く見えて、実はすごい秘密持ちだった北川景子演じる麻美。人ってわからない。
北川景子は、本人は頑固なほどしっかりしているのに、なぜか幸薄、という役が続いている。
親は再婚、借金に名義を使われ、中絶を経験させられ、親友を亡くし、彼氏がスマホを落として殺されそうになり、秘密を暴かれ、みなよとしても麻美としても散々だ。本人に非があるとすれば、友達の頼みを断れないくらい。スマホは変えられても、戸籍は結婚しても改名しても追えるし、今世ではなりすましくらいしか生き直す術がないのがかえってかわいそうに思える。
特定できるID、パスワード、画像、プロフィールを使わない鉄則を絶対に守り続けようと思わされる作品。
そして、そういう発想なくリスク管理が甘かったり、自己顕示欲丸出しな知り合いを持つのも、そこから芋づる式に被害に遭うから嫌だなとすら、思わされる作品。
作品の重さをやわらげるためなのか、狂った凶悪犯役の成田凌が愉快犯のようにふざけている姿が、薄気味悪さを助長するというよりは、こちらも笑ってしまうようなコミカルに軽くうつってしまうのが良いのか悪いのか。
スマホで色々トラブルに巻き込まれていながらもなお、最初から怪しさ満点の成田凌に神頼みのようにスマホを預けるおとぼけカップルが信じられないが、心境はわかる。
原田泰造が、刑事役が何を見ても本当に似合っていて、ルックスもキャラもそっくりだし、いつかルパンの実写化作品に銭形警部役で出て欲しい。そうしたらルパン役は賀来賢人がハマりそうだなぁ。