「ぜひヘッドホンを着用して観てほしい映画」THE GUILTY ギルティ(2018) といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
ぜひヘッドホンを着用して観てほしい映画
緊急通報司令室で働く主人公のアスガーが、電話越しの音だけを頼りに誘拐事件に立ち向かうというストーリー。
上映時間は88分、おそらく映画内での時間経過も同じくらいでしょう。視聴者はリアルタイムに進行する誘拐事件の全容を、電話の向こうから聞こえる音だけで推測する形になります。まるで自分が主人公のアスガーであるかのように感情移入しながら観ることができます。
この映画の凄いところ、それは台詞のある登場人物のほとんどは、「姿も形も見えない」というところでしょうか。ほとんどの登場人物は、主人公アスガーとの通話でしか登場しないので声だけの出演となります。警察官・主人公の相棒・被害者女性・誘拐犯・子供。声だけしか登場しません。しかし電話越しの声と画面に映るアスガーの表情だけで、緊急通報司令室の映像しか映らないのに、誘拐事件が目の前でリアルタイムに発生しているような錯覚に陥ります。電話越しに聞こえるのは声だけではありません。雨の音・車のエンジン音・ワイパーの音など、あらゆる環境音が非常にリアルに聞こえてきて、視聴者の想像を掻き立てます。
電話での会話のみならず、一分一秒を争う場面なのに相手がなかなか電話に出なかったり留守電になるなどの細かな演出によって、アスガーがもどかしさを表しているのも見事でした。こういった細かな演出には、製作スタッフの強いこだわりを感じます。
ただ、ストーリー自体はあまり目新しさの無いものでした。
途中で伏線が張られていたり驚きのどんでん返しがあったりして楽しめましたが、よく言えば王道・悪く言えばありきたりなストーリーだったので、わざわざこの映画でやる必要性がありません。「相手の声しか聞こえない」という特殊なシチュエーションを活かしたストーリーであればもっと楽しめたんじゃないでしょうか。
しかしながら、総合的に観れば本当に面白い作品で、こういう新しい試みの作品がもっともっと増えてくれればいいなぁと思います。