「会話劇の本当の面白さ。物語のその先まで面白い!」THE GUILTY ギルティ(2018) 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
会話劇の本当の面白さ。物語のその先まで面白い!
いやあ面白かった。本当に面白かった。息もつかせないサスペンス。電話の声のみで、いや電話の声のみだからこそサスペンスを盛り立てる。サスペンスが盛り上がる。これは作戦勝ちと言っていい。警察の通報オペレーションルームの中だけで、映像は一切外には出ない。もちろん事件現場も映らないし、電話の声の主も分からない。観客にとっても主人公と同様手がかりは電話から聞こえてくる声だけ。その声から受ける印象。先入観。思い込み。思い過ごし。そこにあるのはサスペンスであり、列記としたドラマ。
そんなワンシチュエーションの画面の中、主演のヤコブ・セーダーグレンはほぼ出ずっぱりで魅せ切る。一人芝居と言ってさえ良さそうなほど、画面の中にいるのは概ねヤコブ・セーダーグレンただ一人。自分の存在と演技だけで観客を引き込まなければならない。でも見事に引き込まれた。もちろんストーリーも観客を引き付ける。限定された情報の中、こちらも主人公と同じように事件について考察する。なにか手がかりはないかと思いめぐらせる。どうにか被害者を救えないかと緊迫する。息が詰まる。脚本は情報の落とし方が上手で、限られた手数の中で最後の最後まで物語を魅せ切る。それだけではない。事件の真相が判明した後さえ、まだ尚映画は魅せる。真相が浮き彫りになった後で気づかされる人間の「感覚」の危うさ。それを体現するヤコブ・セーダーグレンの演技・・・と巧みさがループして映画全体に巡っているかのよう。実にお見事。これは非常によく出来た秀作。ヤコブ・セーダーグレンだけでなく、声だけで演技をした電話の向こうの役者さんたちの素晴らしさも含め何もかもがパーフェクト。
どこを取っても無駄がなく、全てが効果的に機能して映画になったと言う感じ。85分という短い上映時間が3時間の大作のようにも、わずか一瞬の一呼吸のようにも感じられた。(06th Apr. 2019)