「ミニチュアハウスに引きずり込まれたのは…」ヘレディタリー 継承 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
ミニチュアハウスに引きずり込まれたのは…
アリ・アスター監督作品は初見。「ヘレディタリー/継承」が公開から絶賛されてるのは知っていたものの機会を逃し、「ミッドサマー」公開前になんとか観なければ、と思いようやく観賞。
クッソ怖いのは覚悟して観始めたんだけれど、終盤は歯をガチガチ言わせるほど恐怖に顔を歪ませ声を出し、劇場で観なかったことを心から安堵した。
それは個人的な恐怖の中で比重が高いのが"パーソナルスペースを恐怖が侵略していく様"だからだと思う。
冒頭のミニチュアハウスにカメラが寄っていって実際の部屋へ切り替わる演出や、外からミニチュアハウスの中を映す様なカメラワークは"悪魔によって母親が操られ、一家が弄ばれる"だったり、"一家がミニチュアの様にカルトに操られている"メタファーとして読み取っている解説を見たけれど、個人的にはもっとメタ的に"ホラー映画をミニチュアハウスの様に俯瞰して観てる観客を作品内に引きずり込んでいる"様に感じた。
恐怖と共に演出も素晴らしく、
"窓に激突した鳩の首を切り取って胴体を何かに捧げるチャーリー"
"道路上に放置されたチャーリーの顔に群がる蟻"
"就寝中のピーターの顔に群がる蟻"
"太陽光を反射した様な光の演出"
"夜と昼を電灯を点けた様に切り替える演出"
"屋根裏に向かって天井に張り付いた状態で頭を叩き付けるアニー"
"首吊りしながら糸ノコで自らの首を切り取るアニー"
"ハウスツリーへと浮遊していくアニーの胴体"
など、挙げればきりがない新鮮な演出に、冒頭から中盤は目を離せないけど見たくない状態に、終盤は目を覆うんだけど見ざるを得ない、ホラーでよくある『大きい音で驚かせる』ではない恐怖に初めて「呪怨」や「リング」、「パラノーマル・アクティビティ」を観た時を思い出した。
もちろん演出だけではなく、出演の役者さんそれぞれの演技がとても"異質"でとても"見事"で演技の意識は全く無く観れた。
それはピーター役のアレックス・ウルフさんを先に「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」で観ていたのに終盤まで気が付かなかった位。
作品内での設定も、観ている間は謎な部分でも観終えてみると細かい所の謎も解消する見事な種明かしの展開もあり、(作品の恐怖を考えなければ)拍手を送りたい位の出来だった。
作品を観て何が何やら…って人は是非公式サイトの完全解析ページを参照して疑問を払拭してからもう一度観て貰いたい。
観終わった結果2月公開の「ミッドサマー」(予告編のみ観賞済)を俄然観たくなくなった(怖すぎて)んだけど、どうにか叫び声を物理的に上げずに観れる方法は無いものだろうか…。