「絶賛されて当然の完璧さ」ヘレディタリー 継承 roka jyoさんの映画レビュー(感想・評価)
絶賛されて当然の完璧さ
とにかく褒めちぎられているこの映画……ほんのワンシーンをちらっと見ただけで、生き物としての本能が拒絶する怖い映画だ。
一体何が怖いのか。普通の大人としては、血まみれの死体が登場したところでさして恐怖を感じない。リアルじゃないから。作り物だから。
この映画の死体は、画面の向こう側にまで迫ってくるような本物の恐怖感を与えて来る。なぜか。
映画というのは比喩表現だ。そしてこの映画が比喩するところを汲み取れば、もう本当に怖くて仕方なくなる。
この映画の画面の構成はとても独自だ。模型の家の中で登場人物たちが生きている体をなしている。つまり神の視座で物語は進む。登場人物たちは神の視点から見た人類そのものである。
ぼろぼろに病みながらも作家として模型を作り続ける主婦は、化学を発展させ芸術を生み出し、そこに救済を見出そうとする人類そのもののように思える。
アメリカ映画、というところにも意味を感じる。
ラストで悪魔崇拝者たちが土下座している姿は、風刺漫画でアメリカ人が銃に対して土下座している姿を思い出させた。悪魔崇拝者たちが崇めているのは銃社会でありトランプである。
北朝鮮の脅威にさらされている日本人には鳥肌ものである。なんでトランプさん選んだし!!!!!!!という大統領選時の阿鼻叫喚炸裂ふたたびである。
挙句ミサイル飛んでくるとかもうほんと勘弁してください…
ラストシーンも模型として表現されるが、「神から見れば私たちの文明はこんなにヒドイ有様なのですよ」と、提示された気持ちになる。確かにヒドイが、同時にとても美しい。さながらこの映画そのもののようにである。
怯えていた姿から一変したピーター(アレックス・ウルフ)も大層なイケメンっぷりで、美しいと表現して良いと思った。日本人をむちゃくちゃに翻弄しながらも魅了し続けるアメリカ文明のうつくしさ。
ラストシーンのアレックス・ウルフはアメリカそのものである。
さすがスティーブンキングを生み出した国だ。アメリカの底力を見た。