「自閉症をうまく捉えており、納得しながら見入ってしまった」500ページの夢の束 ポップコーン男さんの映画レビュー(感想・評価)
自閉症をうまく捉えており、納得しながら見入ってしまった
非常に素晴らしい作品であったが、何よりも自閉症(今回は軽度の知的障害だと思われる)を実に見事に捉えていて、その実を見事に作品内に落とし込んでいる所。
それを驚くぐらいに自然に魅せているのも、ダコタ・ファニングの演技の素晴らしさが相まってのこと。
「アイ・アム・サム」での演技でハートを鷲掴みにした彼女ですが、大きくなっても群を抜いた演技力で非常に素晴らしい作品を作り上げてくれています。
自分はかなり長い間、自閉症を含む障害を持つ方と関わる機会が多く、動きや視線の向け方、言葉のセレクト(これは字幕や和訳とのニュアンスがあるかも)も非常に自然であり、見ていても違和感を感じなかった。
自閉症の事がわからない人も非常に多いと思います。
今回のウェンディはアスペルガーに近く、自立した生活がある程度送れる人のようで、脚本の構成を作り上げたりとどこが違うのか難しいとは思いますが、自閉症特有の感覚過敏であったり、また対人関係の形成の難しさ等が描かれています。
しかしそれをスタートレックと言う大好きな物が乗り越えさせてくれる。
自閉症の方にとっては経験したことのないことは自分たち健常者に比べるととんでもなく大きな壁であり、日常の日課が出来ないことももちろんだが、交差点一つ渡るのもそれは非常に勇気のいること。作中では勇気と表現されていたが、そう言う概念を超えた位置にある感覚さえ支援している中で感じます。
だから物事や行動の一つ一つがとても大きく、すごいことなんだなーと思って見ていただくと感じ方が変わるかもしれません。
ロードムービーとして取って付けたような内容がいくつかありますが、そのシーンはいるのか?ってのもあったな。
今作の中で出てくるセリフは色々と心を打つ台詞が多く、おばあさんの自閉症の孫の話で「世界一優しい子、でも物事の理解に苦労してるわ」の表現がとてもステキだと思った。
誰しも心のなかにスター・トレック(大切なもの)があり、その事に対する共感で気持ちが豊かになったり、力をもらったりといった事があると思うが、今作はそんな大切なものの素晴らしさを映画いているし、どんなに困難であっても「前方」に向かって進む大切さを描いていた。
自分はスター・トレックについては深夜にやっていたのを流し見してたレベルなので「おー、そういうことかー」とはならなかったが、劇中に描かれていたやり取りで隠されたステキなものがあったかもしれない。
ダコタ・ファニングを久しぶりに確認しようと見た作品であったが、思った以上に良い作品であり、多くの人に自閉症への理解が広がり、少しでも住みやすい世の中になればと思った。