「これぞ虚淵ゴジラ」GODZILLA 星を喰う者 dobuさんの映画レビュー(感想・評価)
これぞ虚淵ゴジラ
とうとう三部作が完結してしまった。
これまで常に期待を裏切り、期待以上の作品を作ってきた虚淵氏が日本の代表的怪獣であるゴジラをどう描くのか、期待を膨らませて映画館に足を運んで鑑賞後には興奮で鼻息を荒くしながら帰ったのが昨日のようだ。
自分のゴジラに持つイメージは「デカイ、ツヨイ、コワイ」だ。
過去の実写作品でも結果として人類が救われることはあっても、それはゴジラにとっても邪魔だっただけであり人類の味方となったわけではない。
今三部作はゴジラ初のアニメでありそして三部作だった訳だが、新しい視点でありながらも先に挙げたゴジラのイメージを踏襲しながらも、予想と期待を大きく上回ってくれた名作だったと感じる。
今作は象徴的な三つの種族「人類」「ビルサルド」「エクシフ」によって、異なる視点からゴジラを捉える事が出来る。
人類は地球を奪われた憎しみや恐怖という心理的視点
ビルサルドは逆に感情を排除した科学的視点
そしてエクシフはどちらとも違う宗教的視点
それぞれ1部では人類がゴジラ・アースによって心を折られ、2部ではメカゴジラシティが、3部では神とされるキングギドラが倒され全ての面で人類側はゴジラに敗北している。
しかし、この映画の「敗北」に関しての解釈は別れるところであり、人類は本当に「敗北」したのだろうか?
人類にとっての勝利条件は「ゴジラを排除し、地球を取り返す」事であり、それに関してはフツアの民が「ゴジラを排除」以外の点では達成している。
ビルサルドの「メカゴジラと同化することによる進化」も結局はまたギドラなどの星自体を破壊する怪獣を産み出す可能性があるため、勝利とは言い難い。
エクシフに関しては破滅ありきなので言わずもがな。
となると、今作のラストはむしろ人類の勝利だったのではないかと思えてしまうのだ。
ハルオは地球に子孫を残し、最後はギドラへ繋がるナノメタルとなったユウコと人類のゴジラへ抱く憎しみと共に安堵とも取れる笑みを浮かべながら最期を迎えた。
これにより2万年前から続く人類の憎しみは消え去り、ゴジラには畏怖だけが向けられ人類との対立はなくなった。
その証拠として、エンドロール後の儀式で「怖いものをお焚き上げ?」する場面で子供達の「怖いもの」のなかにゴジラの名前は出てこなかった。
斯くして地球はフツアとゴジラによる共存によって物語は幕を閉じた。
個人的には、今回の後半でマーティン少佐(人類の科学者)が、ギドラに一方的にやられるゴジラを応援するシーンは興奮で思わず前のめりになりました。
過去作でも「倒すべき相手」であるはずのゴジラを逆に応援してしまいたくなるような事がありましたが、それをこんなに上手く観客にさせてくれるのはきっと虚淵氏の手腕によるものなのでしょう。
ゴジラと言うキャラクターは最初にも述べたとおり「デカイ、ツヨイ、コワイ」であるべきだと思うし、それを三つの種族と三部作と言う尺を使ってここまで見応えのある作品に仕上げた制作スタッフに拍手を送りたい。
星が4なのは、やはりそれでもどこかでハッキリと人類にはゴジラに勝って欲しかったと言うのと、ギドラのウネウネだけでなくキチンとした本体とゴジラの戦いが見たかった、あとモスラの見せ場がががががg、といったところがあったためです。
それでも大満足のゴジラでした!
駄文をここまで読んでくださった皆さまありがとうございます。