「GODZILLAを冠する映画ならゴジラ映画を作れ………」GODZILLA 星を喰う者 ミュウさんの映画レビュー(感想・評価)
GODZILLAを冠する映画ならゴジラ映画を作れ………
アニメーションのゴジラ映画、3部作の最終章です。
結論から言いましょう。
「★TU★MA★RA★N★」
■まず一番の不満点その1「ゴジラとギドラの戦い??」
圧倒的に戦闘シーンが足りな過ぎる。足りな過ぎるどころか単調過ぎる。
両者とも、今までのゴジラ映画の中で最大の巨躯を誇るのだから、地球が壊れるぅううううう!!と思うぐらいの大乱闘を繰り広げてよ…。
300mのゴジラすらも豆粒に思えるほどの長い首を異空間から伸ばしてくるギドラ。
時間や空間、肉体という概念すら超越し、別宇宙(別次元)から一方的に攻撃してくる。
ゴジラが開口一番、熱線をギドラに向けて発射!
ギドラは空間を捻じ曲げて熱線を逸らす。曲がった熱線で吹き飛ぶ大地。
ギドラはゴジラに接近するが、ゴジラの物理攻撃(ひっかき)はすり抜ける。
いいよ!圧倒的でカッコいい!今度はギドラの攻撃な!何が出るかな?
でも・・・
設定だけなら超胸熱なのに全然活かされてない。ギドラがやった攻撃はただ巻き付いて噛み付いただけ。引力光線すらも吐かない。
・・・はぁ?あなたはただの光るヘビですか?
宇宙に残っていた人類の宇宙船を破壊した時のような、時間も空間めちゃくちゃにして何が何だかわからないうちにやられる、そんな攻撃をビジュアル化して見せてくれるのをこっちは待っているんだが??
いや、ゴジラを圧倒してるのはわかるよ?
でもビジュアルだけで見れば噛み付いてるだけなんだよね。
何が起こっているかを地上の人間がひたすらベラベラダラダラ解説してくれてるけど
そんな言葉はいらんのですよ。
百聞は一見に如かずじゃないけど、映像として見せてくれよ。いや「魅せて」くれよ。
ゴジラの熱戦が雲も大気も切り裂いて宇宙まで飛んでいく。
ギドラの引力光線が大地が降り注ぎ、地面が抉れ、次元を超えてあらゆる方向から攻撃してくる。
そんな強敵を前に人類との闘いでは見せなかった、全力を出すゴジラ。
ゴジラとギドラのぶつかり合いで地球が悲鳴を上げる。
そんな人類ではどうしようもない怪獣同士の攻防で起きる阿鼻叫喚の地獄絵図を見せてくれよ。
■不満点その2「ゴジラ倒すの無理ぽ。とかここまで来ておいて言うか?」
おい、このゴジラ映画はつまり何が目的だったんだい?
地球に帰ってきたのはなぜなんだい?ゴジラを倒すためじゃないのかい?
3部まで引っ張って、ゴジラは自然そのものだから憎むことなく共存していきましょう、だと?
だったらハルオを主人公なんかにするんじゃねえ。
だったら最初の1部の時から
「ゴジラを倒すなんて無理だ」「人間は自然には勝てない」「人の業に悩む」「軍のやり方に反旗を翻す」「戦いを止めたいと願う」そういう思想を持った主人公を用意しておけよ。
そういう主人公が1部2部でゴジラ打倒を夢見て敗れていく仲間を見送りながらヒューマンストーリーを展開し、3部でゴジラと人類の戦いを止めることができた。という流れなら整合性が取れる。
ハルオは1部「ゴジラ殺す」2部「ゴジラ殺す」3部「無理ぽ、死のう」じゃ、あんまりじゃないか。
いや、一応わかってはいるよ?
憎しみを持ちつつフツワとの交流を通して「勝つとは、命を繋ぐこと。生きること」だと悟り、ハルオは命を次に繋ぐことができた。だから自分はもう役を果たした。自分の命に宿っている憎しみ(ギドラ)を次世代に残さないために、命と共にここで断ち切ろう、と。
■総括「怪獣映画なら怪獣にもっとスポット当てろ」
ゴジラもギドラも怪獣としてのビジュアル、スペックは良いモノ持ってんのに「人間が邪魔過ぎるぅー!!」
プロレスやK-1を見たくてテレビをつけているのに、8割は実況解説者を映してるようなもん。
■その他1「ギドラ・・・でてこぃや!」
引きこもりか!首だけじゃなくて体も出せ!
※劇中のシルエットは良し
■その他2「モスラ・・・でてこぃや!」
こっちは卵に引きこもりか!はよ生まれろや!
※劇中のシルエットは良し
なんかね、劇中で2体ともシルエットで登場なのよ。
元クリエイターなのでモノ作りの現場知ってる身としては「あぁ、予算がない中なんとか形だけでも出したい」という裏側の苦悩が見えてきていたたまれない気分になったわ。
たぶんギドラが首だけだったり、人間劇場がくっそ長くてダルいのも、全ては予算のせいだわ。
ゴジラが動けば動くほど、大地が削れるように、予算も削れていくから、なるべく動かしたくない。だから人間群像劇長めに。多分90分中でゴジラを動かせるコマ数(予算)が決まってるんだろうな・・・。
ギドラとゴジラが両方大暴れした日にゃ、映像も金も火の車だわな。
ギドラもモスラも全身モデル完成させるだけでも大金が飛ぶ。
だからギドラの頭部と首のパーツだけ作って、首はコピペでどこまでも伸ばせる。
■その他「怪獣映画の美学」
怪獣は何かを壊さなくてはならない。
アニゴジ映画を通して言えることがあるのだが、街がない。
人が作った建物、文化、果てはエゴや感情などを粉砕する美学。
そもそも最初から壊されている大地に300mのゴジラがいても、何も壊れるものがない。破壊する対象がない。それは映像としてつまらない、退屈な原因の一つだと思う。
1部は、ゴジラアースが兵器群を瞬殺する場面が、2部のMGシティが最後に一掃されるシーンが一番面白い。でも3部は、何も破壊されていないのだ。
■次回作は・・・ある・・・のか?
モスラちゃん(お怒り様)が出る日は来るのか?
もし来てゴジラ対モスラになったらハルオはまさに犬死DAZE!
1部〜3部を見て、結局1部が一番面白かったな。
やはり3部作モノというのは1部が一番面白いの法則は健在だったわ。
特撮の苦手な私的には大変満足いく作品でしたが、3部目は1、2部に比べてちょっと、かなり物足りなさを感じました。貴方の感想や解説を読んで納得できました。最後が盛り上がりに欠けていましたね。