「何をしたかではなく、どう生きたか。本当のファンは観ないほうがいいかも」ボヘミアン・ラプソディ スタコラフスキーさんの映画レビュー(感想・評価)
何をしたかではなく、どう生きたか。本当のファンは観ないほうがいいかも
この手の映画は、題材(ここではフレディの生涯)とバジェット、作品の長さの決まっている壮大な大喜利ではないでしょうか。
そして、その評価は興行収入。そういった意味では大成功を収めた映画と言っていいと思います。
最初にトレーラを見たときはクイーンのドキュメンタリー??って思ってしまいました。本編でのライブエイドの映像はかなりの完成度でした。
登場人物が実在の有名人が多いので俳優たちもかなり本人に寄せてる必要があったと思いますが、クイーンのそこそこのファンである私には十分でした。特にブライアン・メイは“寡黙なインテリのギター職人”のイメージぴったりでした。
肝心のテーマは、ひとは何をしたかより、どう生きるかが重要なのだというところにあると思います。
フレディ・マーキュリーはもちろん凄いことを成し遂げたわけですが、この作品の中ではスターである前に1人の人間として描かれています。
情熱的で天才肌のフレディがその情熱がゆえに次第に孤立していき、孤独と挫折を味わう。そしてそこからどう立ち上がるのか、という映画としてはありがちなストーリー。しかし、実際に体験した人たちから聞き取った内容が盛り込まれているので説得力があり、レミ・マレックの好演もあって、フレディの生きざまが厚く表現され、十分に見ごたえのある作品になっていると思います。
当時、乱交パーティーや薬物使用、HIVのニュースに触れた、20歳そこそこの私は、『フレディ・マーキュリーやっぱエイズだってさ』とたいした知識もないのに、蔑んでいたことを反省させられました。
ただ、残念だったのは最後のライブエイドのシーンで、ところどころに挟まれる、フレディを応援する人たちのこれみよがしな、暖かなまなざしのカット。”やっぱりか”と私には一番興ざめする演出でした。(自分がひねくれてるだけかもしれないが)
ちなみに、かなりのファンである私の友人は感動できないのが判っているから行かないそうです。クイーンに詳しい方には鼻につく場面もあるかもしれないので、観ないというのも賢明な判断かと思います。