ヴァンサンへの手紙のレビュー・感想・評価
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ろう者の文化へのリスペクト
ろう者の俳優、レベント・べシュカルデシュによるパフォーマンスが象徴的だが、手話という言語の肉体の饒舌さに驚かされる。音のない世界は実はこんなにも豊かなのだと感じさせる貴重な映画だ。ろう者への差別の実態も描かれるが、それ以上にろう文化の豊かさに焦点を当てているのが素晴らしい。
親友のヴァンサンが自殺したことにこの映画の制作は端を発するが、その謎や自殺の責任を誰かに問う作品ではない。健聴者がろうの人間に対してどんな誤解をしているかを丁寧に解説し、ろうのは健聴者にはない独自のカルチャーがあることを教えてくれる。
人工内耳手術という選択にも一石を投じている。ろうは一つの個性であり、独自の文化さえあるのなら、手術がいつも正しい選択とは限らないと映画は主張している。耳が聞こえないのは治療すべき障害か、それとも一つの文化への入り口か。健聴者が知らない豊かな文化への扉を開けてくれる映画だ。
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