「☆☆☆★★ 原作読了済み。 先ずは原作を読んだ率直な感想。映画はま...」七つの会議 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆★★ 原作読了済み。 先ずは原作を読んだ率直な感想。映画はま...
☆☆☆★★
原作読了済み。
先ずは原作を読んだ率直な感想。映画はまだ未見の状態で…。
原作は全8話により構成されている。
どうやら池井戸潤ファンの間では傑作との認識らしい。確かに読んでいてもワクワクさせられた。
途中までは…。
全8話には、それぞれ中心となる人物がおり。その人となりが描かれて行く。
特に、中盤にあたる3話から5話までは本当に面白い。
ただ気になったのは。その8話の内、第2話目と第4話目。それと第5話目は、ほぼほぼ読み終えるとそこの話だけで独立している様に感じる(実は連動しているのだが)内容なので。映像化した際には丸々カットされるおそれは否めないと感じた。そうしないと、2時間とゆう尺に収めるのは難しいだろう…との思いも。
(6話目の北川の話も、詳しく描くのはどうなのだろうか?)
そして最大の謎なのが、原作に於いて読者が1番魅力的と感じるキャラクターの《居眠り八角》だ!
彼は典型的なグウタラ社員なのだが。何故だか社内でも一目置かれている。
原作でも。全8話の内7話までは、重要な時にちょこちょこっと顔を見せ。最後の8話目には刑事コロンボ並みの活躍を見せる。
1番謎な要因として。このグウタラ社員である《居眠り八角》が。過去の【社内隠蔽工作】をある程度把握していながら、何故何の行動も起こさなかったのか?何故この倒産の危機に陥った《今》になって、彼の中での【正義感】が生まれて行ったのか?…が、読んでいて謎として残った。
いや!決して貶している訳では無く。本当に、素直に思った気持ちからですが…。
とは言え。戦後の高度成長時代を経て、日本の典型的と言える《モーレツ社員》の奮闘振りを始めとして。とかく【嫌われ者が世に蔓延る】世界への憤り。【正直者が報われない】世の中を憂いているかの様な登場人物像を対比させた描き方で。それぞれの話で中心となる人物達が。産まれて生を受け。親から受け継いだ教育や環境が、どんな考え方や性格へと変わり。この【隠蔽工作】とは、どの様に関わったのか?…を描く形式の原作になっているのは、素直に凄い!と思わせずにはいられない。
ちなみに、秀逸な予告編で効果的な台詞の「売って!売って!売り叩く!」や、「まるで犬だな!」…と言った。印象的な台詞は、原作には全く無い。
以下、映画を観終えた感想。
いや!いや!いや!いや!いや〜!これぞ典型的なテレビドラマと言える程に、全てを台詞で説明していたのには、まさにビックリこき麻呂でしたΣ(゚д゚lll)
本来、歌舞伎や能と言った、伝統芸を修得した役者さんならば。立ち振る舞いで有ったり、所作等の《芸》により、その美しさが少しづつ身体的・心の奥へと入り込み。やがては、その演じる人間像を形成させて行く。
それを我々観客側が受け止める…のだと思うのだが。
スクリーンの画面上に提示される、野村・香川・片岡を始めとして。登場人物の全ての俳優達が、良く言えば【漫画的】悪く言えば【大袈裟】な演技に終始しているのは、まさにテレビ的な勧善懲悪ドラマを目指しているのは明らかで。観客側は、それを楽しめるかどうか?が全てと言える。
…のかな?〜と。
それにしても、原作だと主演にあたる《居眠り八角》と準主演の位置に居る原島。
この2人の内、八角は各話にチラチラっとだけ登場するだけだし。原島に至っては全くの空気と言える様な存在の無さ。
元々この【社内隠蔽工作】は、第4話の新田。第5話の佐野。それに第6話の北川の告白を含めて明らかになって行くのだが…。
流石にそれでは映画として「どうなのか?」…との思いが強かったのか?始めは原島と第3話の主役優依のバディムービーから発展して。やがてはハ角・原島・優依のトリオにより明らかになって行くのは、映像化としては正解だと言えるのではないだろうか?
何よりも、原作を読んだ限りに於いては。↑にも記した様に《居眠り八角》として蔑まれ。幾ら会社の事を思って…とは言え。【社内隠蔽工作】に対し、長い期間に渡って口を出さなかった八角が。突如として【正義感】に目覚める姿に、今ひとつ釈然としない思いを感じたからなのですが…。
(映画化のラストには、ハ角本人の口から心境の変化が語られる。確かに原作にも描かれてはいたが、映画で語られる程の説得力は感じられ無い。)
そして優依が中心となる第3話。原作を読んだ時に1番魅力的で、面白く読んだ話で。この話だけで退陣してしまうには全く惜しい人物像でした。
それだけに、彼女が映画の中で大活躍するのはまさに嬉しい悲鳴。
(彼女は原作の最後にチラッと登場するのは、映画の中でも再現されていた。)
もう1人、第4話の主役の新田。
予告編から考えて。原作を読んだ時に新田役はおそらくオリラジ藤森だろうと思いながら読んでいたが。この新田役は少ししか登場しないが、とても面白い役回り。「ひょっとすると、1番の美味しい役なのじゃあないか?」…と思っていた。実際に映画を観ても面白い役回りで、オリラジ藤森の演技も良く。今後も脇役俳優として重宝されそうだと感じた。
そんな良いところも有るものの、総体的に言うと。『マスカレード・ホテル』を観た時にも感じたのですが、映像で語るよりも、全てを台詞に頼っているのを観るにつれ。如何にもテレビ局の製作した映画だなあ〜…というのが、映画を観終わっての率直な感想でした。
2019年2月3日 イオンシネマ市川妙典/スクリーン6