劇場公開日 2019年2月15日

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「選択に振り回される」フォルトゥナの瞳 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0選択に振り回される

2019年2月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

その瞳を自分が持っていたらどうするだろうか、と考えさせられつつストーリーに全く乗れないまま終わってしまった。

慎一郎も葵も周りの人達も、テンプレ感満載。
お綺麗で野暮ったいキャラクター像ばかりであまりにも薄く見えてしまい、誰にも何の感情も重ねられず。
人間的なリアルさが欠けていて、主役二人を全然愛しく思えない。
恋愛の要素が大きくキモになってくるので、二人のどちにも感情移入できないのはなかなか辛いものがある。

「選択」というのが一つのテーマ。
過去を後悔したり現在を恨んだり未来を求めたりと、選択に振り回される慎一郎が哀れ。
やり直しの効かない人生において、小さなものから大きなものまで無意識にも選び生きていることを改めて実感させられる。
正しい正しくないの判断はできないし、考え直したところでタラレバ話になってしまうのが痛いところ。
ただ、終盤の二人の大きな選択について私はあまり共感できなかった。

何の予想も越えない展開にがっかりしながら観ていたけど、少し引っかかりを覚えた眼差しと言葉の意味が明かされた時はかなり驚いた。
しかし、一気に面白くなるか?と期待したのも束の間、圧倒的なコミュニケーション不足に悲しくなる。
その選択が良いものとはどうしても思えなくて、どこかに突破口があったんじゃないかとモヤモヤしてしまった。

具体的に何をどうすれば良いかと言われると困ってしまうけれど。
でも絶対に一度きちんと話し合うべきなのでは…なんて客観だから言えることか。
めちゃくちゃ綺麗に愛し合う二人の姿にスーッと冷めてしまうのが痛かったな。

設定に惹かれて観たわけだけど、そもそもの設定に若干の疑問を抱いてしまうこともチラホラ。あまり気にせずいられたから良いけども。
死を直前に控えた人間の透け方が、肉体組織がブワッと解けているような映像で気持ち悪かったのはとても好き。

やたら鈍臭い演技と演出が鼻につく。
開き直ってそれを武器にできるほどの勢いや強い魅力を感じられず。
物語のアクセントになりそうなナイスキャラも尻すぼみしてしまうのが勿体ない。
しかし冒頭の飛行機事故を示す音声は恐怖感を煽られて非常に良かったと思う。

私は結構薄情だしなかなかこの物語に入り込めなかったので、いざ自分の身だったら…と考えても名前も知らない人の命のことまで考えていられないかも、なんて思った。
全ての人に目を向けていたらキリがない。
ただ、見過ごした際の後味の悪さを一生味わい続けるのがどれだけ苦しいかは容易に想像できる。
よかった、フォルトゥナの瞳を持っていなくて。
感情込めることができていたら感じ方も違っただろうな。惜しい。

KinA