「賛否両論のラストパートについて」劇場版 SHIROBAKO ヨヨ23さんの映画レビュー(感想・評価)
賛否両論のラストパートについて
まず自分は最近アニメを見ておらず、この作品のTV版も未視聴です。
シリーズ完全初見なのですが、レビューが気になったので見てきました。
で、本題のラストパートについてなのですが……
「ここは、この映画のすべてを振り返りながら、制作の裏側を想像しつつ鑑賞するところ」という印象を受けました。
映画制作の物語としては、このラストパートに入る直前、木下監督が悶々としている場面で終わっているんじゃないかと思います。
つまり、どれだけ努力しても満足のいくものには手が届かないと。
全力を出し切ったつもりでもまだ不満が残っていたりすることは誰しもが経験することだと思いますし、どんなことにも言えて、ある種当たり前で、真理じゃないかなーと思います。
(自分はものづくり系の人間でしたので、痛いほどわかりました……)
で、ここからがフィクションをフィクションとして成立させているラスト展開になります。
ネタバレしないで書いているので詳細は省きますが、現実でやったら恐らく何千万円の損失、関係者全員納得はしていても100%怒る展開だと思います。
余程の熱意が無い限り、「そんなの通じるのフィクションだけだから!」と言われるかと……
(そして「フィクションだから!」で一刀両断できる余地を残しておくことで、現実の制作の方々が締め切りを守らない人を牽制している可能性も微レ存?)
それでもこの作品には必要で、観客がアニメについて”改めて”考えさせられるパートだと思います。
出来上がった作品がチープなのは当然。むしろチープだからこそ作品の裏を考えるように誘導されているのかと。
それでいて単にチープな作品ではなく、劇場版らしいアクションでバランスを取っており、絶妙なラストパートだと思います。自分は「こんな打ち合わせがあったのかな」「収録ではこんな注文をしていたのかな」「これは絶対あのアメコミ映画を引き合いに出したハズ」と思いながらラストシーンを見ていました。
総じて、アニメ業界の教本の様な映画だと思いました。
「名作」という意味ではなく、「ガイドブック」的な意味合いでです。
ものづくり系でいうところの「工場見学」とかそんな感じ。
人、モノ、金、時間、契約。いろいろな要素が詰まった映画でした。
事前にアニメの技術本等をチラ見しておくと、ちょっとした背景などのシーンの小ネタがわかって良いかもしれません。
作品の性質上「名作」とは言えませんが、いろいろ考えさせられるきっかけになる「良作」以上であることには間違いないと思います。