「嫌な予感が的中…制作陣はこれで良かったんだろうか…?」劇場版 SHIROBAKO sanchuさんの映画レビュー(感想・評価)
嫌な予感が的中…制作陣はこれで良かったんだろうか…?
大団円を迎えたテレビシリーズから早5年…劇場版としてまさかの復活です。
作品の性質上、2時間程度の映画で纏めることができるのかと危惧していましたが…
嫌な予感が的中してしまいました…正直かなりショックです。
物語の構成としては、次のような流れだったと思うんですが…
①なんかムサニが大変なことになっている…?みゃーもりも覇気が無い…。
②オリジナル作品「タイマス」の制作中止によりムサニは経営難に。スタッフは離散、社長は辞任していたことが判明。
③オリジナル劇場アニメ「空中強襲揚陸艦SIVA」の制作話が舞込む。ムサニはこの話を受けるのか?
④色々あって制作を決意。離散したスタッフが再結集。
⑤権利関係で揉める。⇒「げ~ぺ~う~」への討ち入り。
⑥「SIVA」制作再開。一応完成したけど、この内容でいいんだろうか…?
⑦残り3週間でクオリティアップ。無事公開に漕ぎ着ける。
⑧劇中劇「SIVA」のクライマックスシーン
⑨「俺達の戦いはこれからだ!」みゃーもりはアニメ制作への情熱を取り戻せた…のか?
悲惨な状況からの逆転劇という王道展開なんですが、全くスッキリできないんです。
原因としてはパートの時間配分が変なのと、余計な描写が多く、必要な物がほとんど描かれていないからだと思います。
①~④はストーリー上の「タメ」の部分なんで暗いのは仕方がないんですが…なんか長すぎませんかね?
特にミュージカルシーン。作画に力が入っているのは分かるんですが、これがクドい!
ムサニの状況もあり、テレビシリーズの時よりも、みゃーもりの統合失調症が悪化したのか…と思ってしまいました。
④のスタッフ再結集も、本来なら胸が熱くなる展開のはずなんですけど、全く盛り上がらない…
何人ものスタッフが集まっていくのを淡々と描写していくので、かなりテンポが悪いんです!
更に言うと、なんで遠藤さんにあんなに尺を割いたんでしょうか?そんな人気キャラでしたっけ?
ゲーセンでの瀬川さんとのイザコザ描写も結構尺とってるんですけど、それが全く物語に作用してないのも疑問です。じゃあ何でそんなシーン作ったんだ…?
(瀬川さんは遠藤さんと和解するような描写も無く、何故か太郎とゲームしてる始末… そこは遠藤さんとやっとけば、なんだかんだで和解したのね…と思えるのに)
シロバコは群像劇でもあるので、テレビシリーズなら遠藤さんにスポットを当てても良いんですけど、尺に限りのある劇場版で同好会の面々や、エリカ、太郎&平岡、木下監督を差し置いて描写するべきキャラだとはどうしても思えないんですよね…。
「タイマス」の制作中止でショックを受ける…って流れなら、例えば絵麻ちゃんが初作画監督デビューの筈だった!とか、ずかちゃんの初主演作品の筈だった!とか、太郎が初演出デビューの筈だった!…とか幾らでもやりようがあるのに、何で遠藤さん…?
⑤権利関係のイザコザも、そもそも「タイマス」のトラブルがあったのにナベP(今は社長か)や葛城さんは何やってたの?麻雀してただけ?…と思っちゃうんですよね。
討ち入りシーンは良く出来てますけど、別にシロバコにアクションを求めている訳では無いし…
そもそも新キャラの宮井APってここと居酒屋でくだ巻いてるシーンぐらいしか碌に出てこないけど、わざわざ出す必要性あったんですかね?唯でさえ登場人物多いのに…
⑥⑦ここは幾らなんでも端折りすぎでしょう!テレビシリーズのあるぴんリテイクや、百頭の馬のシーンのように如何にクオリティ上がっていくのかを見るのが
シロバコの魅力なのに、まさか全く描写しないとは…
⑧「SIVA」のクライマックスシーン、確かに良く動いてるんですけど…正直全く魅力が感じられません!テレビシリーズの「えくそだす!」や「第三飛行少女隊」は、このアニメが見てみたい!と純粋に思えたんですが…
原因としては、テレビシリーズの2作品は劇中で如何に面白い作品にしていくのか!…という奮闘が描かれていたので、シロバコという作品の血肉であると断言できるんですけど
「SIVA」についてはそういう描写が全くと言っていいほど無いので、シロバコと全く関係ない別のアニメが突然始まったような感覚なんです。不意にチャンネルを変えられたような…
⑨「SIVA」が公開され、ムサニでは次回作のプランが複数立てられつつある…という感じで終わるんですけど、みゃーもりがアニメ制作の情熱を取り戻した!って感じじゃないんですよね。
妙に淡々としているというか…まあリアルな描写だとは思いますけど…ここは「SIVA」大ヒット!これからもアニメ業界で頑張ります!ってラストで良かったんじゃないですかね…
まあ、客観的に見て「SIVA」はあんまりヒットするようには思えませんが…
劇中で「SIVA」について言われている台詞が、ひょっとして自虐か?と思える程、本作にも当てはまるのは意図的なんでしょうか…?
太郎が演出した納豆のシーンが不要だからカットする…というのも、本作でももっとカットすべきところ沢山あるだろ…と思えるし、「SIVA」はこれでいいのか?…というのも、劇場版シロバコはこれでよかったのか?…と思えてしまうし…
率直な印象として、劇場版はストーリー構成に問題が多いと感じました。
例えば、映画の前半パートで「タイマス」の制作話、中盤で「タイマス」制作中止・ムサニ倒産危機、終盤で「タイマス」の設定流用、ムサニの総力を結集し「SIVA」制作、一発逆転!
…って流れの方が、ほぼ同じプロットでもより面白い作品になったと思うんですけど…。
そもそも今回の作品はシロバコという体裁をとりながら、テレビ版とは微妙に違うアプローチがされているんですよね。
テレビシリーズでは『アニメ制作』を中心に描いたアニメであったのに対し、劇場版では『アニメスタッフ』を中心に描いたアニメになってるんです。
似て非なるテーマなんですよ。表現が適切ではないかもしれませんが、劇場版は私小説的というか、シロバコのファンのためというより、身近なアニメスタッフのために作られているような…
テレビシリーズが好きな人であればあるほど、劇場版には不満や違和感を感じてしまうんじゃないでしょうか。
レヴュー共感しました。
TVシリーズが大好きで、仕事でヘコんだときなど何回も見返していたので、今回も楽しみにしていました。
離散のくだりは必要だったのか考えてしまいますし、ミュージカル部分は上映中に思わず我に返ってしまう感じがしました。
おっしゃる通り、これまでであれば、最後の追い込み3週間の描写にこの作品の醍醐味があった気がしたのですが…。
SHIROBAKOが好きだからこそ複雑な気持ちになってしまいました。
(監督の脱獄シーン、小笠原さんのランニングシーンなど、笑えて好きなシーンもありました)