劇場公開日 2018年9月7日

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「必要は発明の母で有り、QOLの向上こそが最も大切」ブレス しあわせの呼吸 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5必要は発明の母で有り、QOLの向上こそが最も大切

2018年10月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

本作は先ず実話を基に描かれたヒューマンドラマと言う事である。

この作品を観ると、やはり人間の作り出した架空のフィクションでは到底描き出せない実際の体験に則した、真実の重み、重厚さと言う物が画面から溢れ出し、私達観客の心を優しく抱擁してくれた様に思う。
「事実は小説より奇なり」とは、良く物事の本質を表現した言葉だと感心するばかりだ。

本作の舞台は、1950年代後半の英国、何の苦労も無いかの様に見える青年ロビンが、英国社交界の華と謳われるダイアナに恋をし、遂に結婚。誰もが羨む幸せな結婚生活のスタートだった筈。

だが、結婚後間もない2人の甘い生活を一変させるロビンの重い病の発覚。それからのロビンとダイアナ、そして生まれて来る息子ジョナサン、この3人家族の愛の日々を軸に、この3人を取り囲む人々との人間の絆と愛の成長のエピソードの数々が凄いのだ!

60年代70年代の重度障害者の置かれている現実の生活と社会環境問題が描かれていく。
ロビンの妻、ダイアナの家族の協力を得て、当時の英国の介護常識では無かった、障害者の生活をサポート向上させる為の車椅子の開発、及び数々の器具の発明や、その挑戦的な日々の生活の描写を通して、その彼らの生き様に因る、障害者達が健常者と共に、普通に社会で暮らす現実生活の意味を問うていくヒューマンストーリーには兎に角目が離せなかった。

この主人公ロビンには、童顔のハンサムガイであるアンドリュー・ガーフィールドが当たっているが、いつの間にか彼も30代半ばを迎えて俳優としての素晴らしい成長を魅せてくれた!
ロビンは肢体不自由な重度障害者の為に、自力では身体を全く動かす事が出来ないので、アンドリューの芝居の総てが顔の表状だけとなる。彼は単なるハンサムガイと言うだけではなく、「私を離さない」や「スパイダーマン」「沈黙サイレント」でも巧い俳優だと思ったが、更に素晴らしさが際立っていた。
そして彼の妻ダイアンをクレア・フォイが演じていた彼女を観るのは初めてだったが、また彼女もアンドリューに負けずに応戦して見事な芝居を披露している。

ポリオを患うロビンの様な患者の今日に於ける状況については、本作では何も語ってはいないが、しかし、障害の有無に関係なく、人が社会で人々とどの様な関わりを築いて生き、家族とはどのような生活を営む事が大切か?といったヒントが沢山詰った作品だ。
そして最後は、誰もが避けて通る事が出来ない家族との死別を通して、生と死について再考させてくれる素晴らしいヒューマンストーリーだった!安楽死を含め、人間の生きる事の尊厳を描いた秀作を観る事が出来たのは本当に幸運だった!
芸術の秋、泣いて、笑って是非この作品を通して自己の生きる意味を共に発見出来たら素晴らしいと思う。この作品を世に送り出してくれたジョナサンに感謝を捧げたい!

ryuu topiann