「サスペンスでホラーな社会派ドラマ」ジュリアン つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
サスペンスでホラーな社会派ドラマ
予告編やあおり文句から受けた印象は、何か秘密があるサスペンス。特にラスト15分の衝撃、みたいなあおりは、確実に何かあるはずだと自分のサスペンス脳は反応した。
しかし、何もなかった。少なくとも自分が期待するようなビックリするものは出てこなかった。
嘘あおりとは言えないので、うまいことのせられたなと反省すると共に、最後の最後、エンドクレジットが流れる瞬間まで何かあるはずと信じて疑っていなかった自分は、本来楽しむべきポイントを逃したようで、損をした気分だ。
本作はサスペンスやホラーの雰囲気で進む社会派ドラマで、裏があったりトリックがあったりはしないので注意してください。まあ、そんなの自分だけかもしれないが。
内容は、未成年者が問題のある親と接触しなければならない共同親権についてで、その事について違った角度から違うことも見えてくる秀逸なドラマ。サスペンス脳が邪魔しなければもっと楽しめただろうに、本当、残念。
暴力を振るう父に怯える母と息子、というのがメインストーリーだが、その裏で母ミリアムの過去と未来を見せていたと思う。
未来は、ラストシークエンスに登場する向かいの部屋の通報する女性。単なる独居老人だろと言われればそれまでだが、ラストの扉の向こうの親子を見つめる姿は過去の自分を見ているようでもあった。つまりそれはミリアムに訪れる未来といえる。
夫と別れ、子どもたちが巣だったあと寂しく暮らす姿だ。
過去は娘ジョゼフィーヌ。彼女は妊娠をし、盛大なパーティーを開いて恋人と駆け落ちした。
全く同じではないにせよミリアムとアントワーヌにもこんな時期があったはずなのだ。
少なくとも10年、長ければ20年もの間、アントワーヌは問題のない父親で夫だったはずなんだ。
逆にいえば、ジョゼフィーヌの、気が弱そうで優い恋人がいつDV男に豹変するかわからないという話でもある。
これらから見えてくるのは、何がアントワーヌを変えてしまったのかということ。なるべくしてなったわけではなく要因があるはずたと。
そして、DV男に変わってしまう前に止められなかったのかと訴えているように思えた。
もし止められたならミリアムの今と未来は違っているはずだ。
あとは、冒頭の離婚調停のシーンで、調停員とミリアムの弁護士、アントワーヌの弁護士のすべてが女性で、五人のうちアントワーヌ以外が全員女性というのは違和感があるし何か意味がありそうだけどなんでしょう?
何かを読み取ったという人がいたら教えてください。