「鍵の向こうの家庭内暴力」ジュリアン はちさんの映画レビュー(感想・評価)
鍵の向こうの家庭内暴力
フランスが舞台の、DVに苦しむ家族の物語。
両親の離婚の末、共同親権が認められ、父親と隔週での時間を持つことを余儀なくされたジュリアン。
小学生の少年がどれだけ嫌だと主張しても、父親の元へ行かなければならない…。
母親が息子をもっと守れないのかという声もありそうだが、あんな暴力男と正面から向き合うだけでも恐ろしいと、女の私は思ってしまう。
それでも物語のうちで徐々に、子供達を守るために元夫との盾になろうとする母親。
娘さんの歌う姿を見ながら元夫の待つ方へ行くシーン、本当嫌だったろうなぁ…。
やがて元夫の暴力はエスカレートし、真夜中の家へ押し入ってくる。
近所のおばあさんが通報してくれていなければ、命も危なかった。
個人的に考えさせられたのが、
最後にこのおばあさんが心配そうに親子を覗くと、気まずそうに部屋の扉を閉められるシーン。(扉が穴でボロボロ…)
それと、元夫が逮捕されるときに「妻なんだ!」とかわめいてたシーン。
家庭内暴力とか虐待とか、どうしても「家庭の問題」として済まされがち。
家族なら何をしても許されるの?それは違う。
だけれど、家庭の中の問題に、他人が入っていくことは、とてもとても難しい。
閉じられた扉の向こうでどんな恐怖があるかなんて…
また、家族なのに、完全に引き離す判断をすることも、難しい。
この作品は、そんな家庭という閉鎖空間を、「鍵」を隠喩にしてるのかなと思いました。
車中で、新居の鍵に執着する父親とジュリアン。
鍵を捨てることで今の家庭を捨て、大好きな彼と新しい人生を歩もうとする姉。
そして最後に、暴力で鍵を壊して押し入る父親。
昨今の日本国内での社会問題もあって、考えさせられる作品でした。