「母子を守るのは一体何なのか」ジュリアン とえさんの映画レビュー(感想・評価)
母子を守るのは一体何なのか
予想外にラストは恐ろしさからの号泣の作品だった
これはある家庭におけるDVを描いた作品
そんな映画を観ながら思い出したことがある
それは大学時代の友人の話
大学を卒業してから数年後、大学時代の同級生A君が結婚したという話を聞いた
その時、私は普通に
「そうかA君は結婚したのか」と思った
A君は、結婚して良い家庭を築きそうな人だと思っていたからだ
しかし、それから数年後、友人からA君が離婚したと知らされた
あまりの早さにビックリしたので事情を聞くと「妊娠してる奥さんに暴力を振るったらしいよ」と、これまた驚きの事実を聞かされた
その瞬間、さーっと体中の血の気が引いたのを覚えている
A君は、大学時代に一緒によく遊びに行った友人で、日頃から人に暴力を振るうような人ではなかった
しかし、結婚して家庭に入った途端、私たちの知らない「内弁慶の顔」が出たようだった
それ以来、DVというのは、周りの人には分からないところで密かに行われているもので、だからこそ、他人にはなかなか理解してもらえず、恐ろしいものなのだと思うようになった
この映画は、そんなDVの難しさをジュリアンという息子の視点で描いている作品だった
ジュリアンの両親は離婚しているのだが、父は裁判所でジュリアンとの面会日を要求する
どんなに母が夫のDVを訴え、息子が父に会いたくないと言っても、司法は父に最低限の権利を与えてしまう
市民を守るべき法律が、全く機能していないのだ
そこから事態は恐れていた方向へと向かっていく
司法が守ってくれないなら、誰が熊みたいな暴力男から か弱い母と息子を守るのか
現実世界では、ラブコメでよくあるようなムキムキのヒーローが突然現れるわけではなく、都合よく父に事故が起きて痛い目にあうわけではない
その実態は
深夜に押しかけてくる夫の恐ろしさに怯え、ベッドで泣きながら震えている母子が大勢いるということなのだ
一体、何のために司法はあるのか
そんなことを
考えさせられた作品だった
いやはや、本当に恐ろしかった
結婚生活に人には言えない悩みを抱えている人に、是非、観て欲しい作品