「忘れてはいけないこと」ジュリアン 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
忘れてはいけないこと
(追記)
ここ数日報道されている野田市の少女虐待死のニュースですが、少女の感じた恐怖がどれほどのものだったのか想像するだけで、涙が出てきました。
児童相談所とか学校関係者が父親の剣幕に威圧を感じたからアンケートを父親に渡してしまった、と弁解していましたが、家庭という密室でその威圧に晒される少女が受ける絶望的な恐怖への想像力が僅かでもあれば、放置なんか出来なかったはず。
対応の不適切さもさることながら、その『想像力の欠如』こそが最大の問題なのに、メディアも対応のまずさばかり強調し、悲劇の少女への同情と駄目な大人たちを攻撃することがニュースの主題になっているのが心配です。
関係した大人の中に一人でも健全な想像力が働く人がいれば、フォローの訪問なり、再度の保護などで取り返しがつく(少なくとも死なずに済む)可能性があったことを伝えるべきだと思います。
再発防止のためには、想像力が働かないと結果的に見て見ぬ振りをしたことになる、という事態の深刻さをもっと強調したほうがいいのではないでしょうか。
(2019.2.3)
体格も含めた暴力的な威圧に晒された時の恐怖を、恐怖を覚える側から描いており、切迫感と言う意味では、並みのホラーの何倍も緊張を強いられる。
他の入居者が開錠したタイミングに紛れて入ってくるのではないか?非常用の外階段を伝って上ってくるのではないか?
そのような、あの場面では誰もが想像するであろう恐怖が静謐の中の微かな金属擦過音で表され、観客も我が身のことのように息を飲む。その数分間は小劇場の低い天井と観客席の間に、シーンという文字が漂っているように錯覚するほど。
一見、ジュリアンに比べて楽な立場と誤解される姉の恐怖心とストレスもトイレの足元の定点映像だけで見事に描かれており、このアイデアだけでも凄さを感じました。
「サスペンスとして上出来」と作品の仕上がりに満足してしまうとついなおざりになってしまいがちですが、忘れていけないのは、DVも殆どの場合、被害者は女性と子供たちだという事実。
裁判の場に持ち込めたとしてもこの映画のようなことは起こるし、『万引き家族』で描かれたような為すすべのない子どもたちも現実にはたくさんいるのだと思います。
偉そうなことを言っても自分ができることは限られますが、せめて、もし自分の周辺で、暴力的な気配を察知するようなことがあった時は見て見ぬ振りだけは絶対にしないようにする、と思ってます。
観ました。
お姉さんもストレスで生理が止まり、お母さんもやつれてましたね。祖父母たちもボロボロですよ。
暗闇でエレベーターが動いているあの音には息が詰まりました。
僕の実家の両親はDV から逃れて遠隔地に脱出する母子たちをかくまう“隠れ家”を提供していました。
コメントありがとうございます。
昨日でしたが私もシネマカリテでした。
我慢出来ない咳やくしゃみは不可抗力としても、少しでもトーンを落とす様気配りが欲しいですし、そのタイミングで我慢出来るものは我慢して欲しいですね。