「オゾン流グロテスク映画」2重螺旋の恋人 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
オゾン流グロテスク映画
25歳になるクロエ(マリーヌ・ヴァクト)は、原因不明の腹痛に悩まされていた。
肉体的には問題はなく、精神分析医にかかることにし、分析医ポール(ジェレミー・レニエ)の元を訪れた。
穏やかな性格のポールのカウンセリングによって痛みから解放されていったクロエ。
ポールはクロエに恋し、彼女も彼を受け入れ、同居し始めるのだが、同居してまもなく、クロエは街でポールが別の女性と口論をしているのを目撃する。
問うても否定するポールに業を煮やし、件の目撃場所に赴くと、ルイと名乗るその男(ジェレミー・レニエ)が同じ精神分析医として開業していた・・・
というところから始まる物語で、ルイはポールと正反対の攻撃的な性格で、カウンセリング内容も虐待に近いものだったが、クロエは惹かれていく・・・と展開していきます。
ありゃりゃ、これはデイヴィッド・クローネンバーグ監督の『戦慄の絆』ではありますまいか!
というのは予告編を観たときから感じたことなのだけれど、どうも少々様子が異なる。
冒頭の、クロエの内臓器官のアップの後(この内臓趣味もクローネンバーグ的だけれど)、ポールと知り合ってからやたらと鏡を使った画面が登場する。
この鏡を使う演出は、対象の内面のダブル化なのだが・・・
とまぁ、ネタ的には早々に気が付いたりもするのだけれど、それならばそう思って観すすめると、果たして・・・戦慄の真相!
『戦慄の絆』以外にも『ザ・ブルード 怒りのメタファー』や『ヴィデオドローム』『ザ・フライ』などグロテスクなテイストはかなり近いが、クローネンバーグの諸作が「精神が肉体を変化させる」という主題だったが、本作は・・・一般的なサイコスリラーの着地点。
クロエの精神が変化していくにしたがって、彼女が勤める美術館の展示品がおぞましく変化していくあたりは興味深いけれど、結末がわかると、そりゃそうだと拍子抜けしてしまう。
とはいえ、この手のグロテスクなテイストの映画も嫌いじゃないんですよねぇ。