「生き様」こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話 ガブさんの映画レビュー(感想・評価)
生き様
「グッときた〜」という大泉洋の台詞に誘われ観に行った。
鹿野靖明。
筋ジストロフィーを患う実在した人物とのこと。
彼の生き様、ボラへの想い、家族への想いが伝わる作品だった。
これはひとえに大泉洋の演技の賜物だろう。
歯に衣着せぬ喋りに、呼吸器をつけた後の喋り方、彼の息遣い。
大泉さんの芝居が見事だったと思う。
美咲。
最初は鹿野を嫌っていたが鹿野と出会い、何かが変わったんだろう。
高畑さんが出ている場面は演じているというよりは良い意味で、こんな子いるよなという等身大の素の女性の日常を切り取った、そんな不思議な感覚を覚え、また魅力的に感じた。
おっぱいを触らせてあげた時は『洋ちゃん!なんだその役得は!!このシーンなくても成立するだろう!!(笑)』と心の中で叫んでいたが、そんな美咲の対応もまた彼女らしいとも思った。
プロポーズ。
鹿野も勇気がいったと思うが彼女も、かなり勇気が必要だったと思う。
美咲もまた魅力的なキャラクターだった。
実際に田中や美咲がいたのか、あんな出来事があったのかは、わからないが鹿野の想いや人となり、周りの人達の雰囲気は本物だと感じた。
美咲や田中の様に鹿野の影響を受けた人達が沢山いたのではないかと思う。
観終わってみると涙々というよりは楽しく面白く、鹿野の魅力溢れる場面が多かった。
そんな中で私が一番印象に残っているのは鹿野の家族への、、、特に母への想いだ。
彼の家族が登場するシーンは、そんなに多くはない。
だが、どれも印象深い場面だった。
初めて母親が登場した時、鹿野は母親を邪険にし、母親も慣れたように対応する。
最初は昔何かあって嫌らっているのかと思ったが、その真意を知った時、涙がこみ上げた。
特に印象深かったのは人工呼吸器を付け目覚めた時の彼の行動だ。
甘えたくないと言っていた彼が、母親を呼び止め手を握りしめてもらう。。。
彼が今出来る精一杯の甘えだ。
本当は母親の胸に飛び込み、縋り付き泣きじゃくりたかっただろう。
このシーンが一番心に残っている。
大泉さんの作品で泣いたのは『青天の霹靂』以来かな。
久しぶりに泣いたな。
こんな魅力的な人物に出会っていたら私もまた今とは違った人生を歩んでいたのかもしれない。