「宇宙世紀のイデの発現」機動戦士ガンダムNT Masatoさんの映画レビュー(感想・評価)
宇宙世紀のイデの発現
作品の評価の前に、ストーリーの考察になるのですが、今作では前作ユニコーンで描かれた以上に超常的なニュータイプ能力の描写があります。
肉体を捨てた真のニュータイプ、というのも出てきます。
これは今までのシリーズのニュータイプと比べて、明らかに逸脱しています。
これについて、UCシリーズを手がける福井晴敏のインタビュー等に目を通した結果、福井はガンダムをイデオンに帰結させるつもりなんだと思いました。
そもそも福井は「イデオンがなければ小説家になってなかった」と公言するほどの大のイデオンファンです。
思想の根本にイデオンがあり、多大な影響を受けています。
福井は今作ナラティブのインタビューで、
「あの世界では体が滅んでも魂は存在し続け、最終的に自我は溶け合って共有される。
それを受信するのがニュータイプ。
しかも彼らはメカニカルの援用を受けると、無限のエネルギーを引き出して現実世界に物理作用をもたらすこともできてしまう。
それは死後の世界と現世を隔てる界面を揺るがす、凄まじく危険な力なんです。」
「宇宙世紀は今後どこかで一度非道い目にあって、ニュータイプの威力を目の当たりにする事になる。
それは虐殺とかではなく、生死の界面を揺るがしてしまう、最後の審判みたいなことが起こる」
と答えています。
これは完全にイデオンのストーリーと告示しています。
UC2はイデオン発動篇のようなことが起こり、ヨナ、バナージ、ミネバがサイコフレームを封印、ニュータイプがあまり重要視されないF91に繋がる、といった構想のようです。
また、過去に福井がイデオン30周年に電ホビで書いた記事で、
「『めぐりあい宇宙』で示された人類進化の可能性が、『イデオン 発動篇』で早々に究極にたどり着いてしまった。」
「『ガンダム』を経て『イデオン』で結実した物語は、アニメという媒体のみが語り得る究極のドラマである」
…といった旨の発言をしています。
(『そしてアニメは死に、イデオンだけが残った』で記事が読めます)
つまり福井は、当時からイデオンはガンダムのアンサーだと捉えており、ニュータイプの行き着く先は無限力だと捉えているのです。
こうして考えてみると、今作のニュータイプ描写にも腑に落ちるところはあるのですが、やはり宇宙世紀のガンダムシリーズとしては異質なものに感じます。
福井はガンダムじゃなくイデオンを書いてるので、さもありなん、といった感じです。
福井のニュータイプ論はともかく、ストーリーはサプライズやロボアニメらしい面白さもあり、わりと好きでした。
ただ、編集が良くなく、脚本をただなぞって90分に収めたような感じで、総集編のような足早な展開になってしまっていました。
特に序盤は時系列が前後して落ち着かなかったです。
それと、作画はもっと頑張ってほしかったです。
サンライズ第一スタジオなんだから…
作画は大いに期待していたところだったので、とても残念でした。
ブルーレイで修正されることを期待したいです。