「おばけ時間の追体験」A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー バスト・ラーさんの映画レビュー(感想・評価)
おばけ時間の追体験
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静かな映画という印象、生活音や会話などもどこか遠くからぼんやりと聞こえてくる、正にシーツ一枚隔てた幽霊の見ている世界を追体験しているようだ
自分が認識されないぼんやりとした世界で時は瞬く間に過ぎてゆく、
それでいて技法的には長回しを多様して長時間の集中を強いるかなり疲れる仕様
このおかげで幽霊たちが感じている目的も半ば忘れ、しかし未練も捨て去れずに苦痛に満ちた膨大な時間を共有するとこになる
長い時間を経て、未練を残した土地の記憶と自我が溶け合いその土地の始まりの記憶からやり直す、自分が納得できる、探し物が見つかるその一点まで
だからラストでメモを開いた瞬間にシーツの中身が霧散するシーンは美しく開放的だ
作中での会話に宇宙の熱的死の話が出てくる、宇宙は膨張し続け、エントロピーは際限なく増加し、最後にはもう星は産まれない、いかなるエネルギーも取り出し得ない時間的死が待っている
その絶対的な全ての終わりの前では歴史に残る名曲や、人間の存在したことすら無意味だと語られる
個人の思い出や出来事などもっと些末なことだろう、1回目は家の解体で間に合わなかった、だからこそその瞬間は絶望ではなく奇跡だ
大したことは起こらない話のようでいて、けっこう教訓的な生活の糧になる作品だった
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