「人間の視点で観ない映画」A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の視点で観ない映画
死んだ男がゴーストになり、愛する女性を見つめている。これはそれだけの映画である。しかし、ゴーストは愛する者がいなくなった後も、その場にとどまり続け、変化を見届ける。全く起承転結のない作品で、ともすれば眠くなる作品だろう。しかし、異様な魅力を持った作品であると思う。
人間は自分の一生しか生きられず、自分の目線でしか物事を観察できない。しかし、ゴーストは悠久の時を生きる。歴史の大きな流れ、世界全体の時の流れの雄大さを、ただ白いシーツをかぶせただけのゴーストをそこに佇ませているだけで表現しているような、そんな不思議な作品なのだ。
人間の視点ではないなにかを映像化したと言えばいいだろうか。この映画を見る観客は主人公のゴーストと同じ視座にたって人間の営みを見つめることになる。この映画を観ている最中、普通の社会生活を送る人間の視点ではない視点に自分が立っていると感じさせてくれる。
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