「Dwa Serduszka」COLD WAR あの歌、2つの心 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
Dwa Serduszka
どこかで聴いた事のあるフレーズの本文タイトルのそれだが、ポーランドという国のイメージがそのままストレートに表現されていると感じた。やはり『アウシュビッツ・ビルケナウ』を一番に思い起こすのだが、本作品はそれ以降の東西冷戦時のイデオロギーの中で激しく燃えた男女の恋愛関係を描いた作品である。これの何処までが実話であり、フィクションなのかは不明であり、それが監督の両親の話が前提であるならば、人生そのものが長い長いドラマそのものである。とはいえ本作はその長さはサクサクと進んでいき、余計な部分は切り取られているので、少々感情のタメが少ないかなぁとは感じたけど。他サイトレビューにおいて、ヒロインのファムファタールを強調していたが、自分としてはそこまでの悪女のと言う感覚はなく、性格的に捻くれている位ではないだろうか。確かに、男が途切れる事がない人生に於いては女性の共感性は得られないだろうが。それよりも自分的にはそれを健気に待ち、そして人生を賭して愛する男の心情の方が中々理解しにくいものを感じる。それ程感情を揺さぶられる正に運命を感じたのだろうが、人生に於いて、これだけの執着、そして愛と裏切り、そこからの自己犠牲と、まぁどれを取っても持ち併せない欠陥人間の自分としては、これこそ寓話としか思えないものであった。亡命とはいえ、国を嫌いになった訳では無く、その時代の体制が嫌いなのであり、やはり生まれ育った国に帰りたい想いは、年を追う毎に募るものなのだろう。と、何だか当たり前の話始終してしまっているが、実は今作のキモは何と言っても”音楽”そのものである。”オヨヨイ(有名なフレーズ)”から、いわゆる”フォルクローレ”、”ジャズ”、”クラシック”等、激しさ、優雅さ、そして悲哀を余すところ無く作品に載せてくる演出効果は、今作品の正に”ターボチャージャー”そのものである。スタンダード画面の画角と、反比例するかのような音の爆発は、広がりではなく、まるで一本の細い線が奥へ奥へと突き進む印象そのものである。
ラストの心中を印象付けるシーンは、変にカタルシスは押しつけず、ぶつ切りで終わらせるやり方も、イメージとして東欧らしいなぁと感じた次第であるが、総合芸術である映画というものに対する皮肉を込めたエンディングなのだろうか・・・