「非常に巧妙に仕組まれた映画」ある女優の不在 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
非常に巧妙に仕組まれた映画
クリックして本文を読む
イランという国の社会、イラン革命というものが分かっていなければ本当にこの映画を理解できないのかも知れない。しかし、そういう背景を離れて一つの映画はとして観た場合、実にトリッキーなプロットを持った映画だと言う気がしてならない。そう思うのは中心的キャラクターである二人の女優又は三人の女優が会っているシーンは全て直接描写はなくパナヒの視点からしかカメラは捉えていない。彼女らが会っている時に実際どんな話が交わされているか、観客は全くわからないのだ。マルズィエが生きているのが分かってジャファリが狂ったように責めるシーンもパナヒが目撃した時は既にいさかいが始まっていた。つまり、この映画は初めから三人の女優(イラン革命前の有名女優シャルダード・イラン革命後の人気女優ジャファリ・新しい時代の女優になるだろうマルズィエ)が、マルズィエをあの因習深い村から連れ出す為にパナヒを立ち会い人にして大芝居を組んだ話、と見てとれないこともない。何せみんな女優(ないしは女優候補)なのだからお芝居は得意だし。状況証拠しかないが、ラストも対向車を待つ間に車を降りて歩き出したジャファリを追ってマルズィエが駈けて行き峠で追い付いた遠景で終わっている。ただ、もしそうだとしたら、何故こんな大芝居を打たねばならなかったかは、やはりイランという国と社会、イラン革命の知識と理解が必要なのであろう。
コメントする