「映画の続きは現実で」ブラック・クランズマン KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
映画の続きは現実で
KKKという団体について全く知らなかった。
カルト宗教的な覆面が気味悪い。B級ホラー映画に出てくる装束じゃんそれ。
白人が黒人を差別しているだけかと思いきや、肌の色は同じユダヤ人や女性への差別意識、職業差別の要素も取り入れた映画。
バリバリの黒人であるロンがゴリゴリの黒人差別発言をするギャップ、騙される側のやり取りはコミカルに描かれているけど、胸糞の悪さと不快感が常に付きまとう。
ユダヤ人であるフリップとKKKの直接のやり取りも同様。あまり笑えなかった。
KKKの主張も黒人集会の主張もかなり過激で引いてしまう。
ロンの同僚や直の上司がわりと暖かい空気を醸し出してくれていたことに安心した。
細かい方針の違いもあれど、何だかんだフラットに接してくれることが唯一の救い。
デュークとの電話でクスクス笑ってしまうの好き。
素性がバレそうになるギリギリのラインも多く、その度にフリップやロンの交わし方に感心しつつハラハラした。
KKKのメンバーとはいえその思考は足並み揃っているわけではないのが生々しい。
フェリックスのように分かりやすい過激派よりも、ウォルターやデュークのような一見理性的な人間の方が支持を集めやすくて恐ろしい。
いや過激派は命を奪いにかかってくるからそちらも非常に恐ろしい。嫌だ嫌だ。
意向も含みつつあくまでもエンタメとして味わいたい姿勢だった為か、正直映画としてはあまり楽しめず。
思ったよりずっと主張が強い映画だった。
独特のテンポに終始戸惑い、各人の行動に疑問も。
ロンの私情の挟み方は結構モヤモヤする。いやまあわかるけどさあ…。
フリップの警官としての行動にグッとくることを期待していたけど、一番観たかった所がバッサリ切られていたことにがっかり。
一連の出来事を経験してもなおすれ違う考え方に悲しくなる。
なんだか続きが気になる所で終わってしまうのかと思いきや、極端な現実に繋げてくる見せ方に驚愕。
絶望感が大きく、あまりにもやり切れない。
何故こうなるの、もっと個人レベルでゆっくり考えればいいのに何故一纏めにしてそこまで激しく憎めるの。
もういっそ何も知らなければ、記憶をリセットできれば、差別やそこから来る争いは無くなるんじゃないかとさえ思う。
白人と黒人、アーリア人にユダヤ人、コーカソイド、それぞれの人種間で何があったのか、人間の暗い歴史と凄惨な出来事を知り改めて「差別は悪いこと」と思うことも大事だとは思うが、そもそもそれを知ったことで差別思考に傾く人もいるんじゃないか。
人種に対しての意識は知識からくるものなんじゃないか。
例えばこの映画を観て過激な思想が生まれる人や、究極言うとKKKに入りたくなる人がいるんじゃないか。
なんて思ってしまうのも極端な考えなんだろうな。
日本人も現在進行形で近しい国の人間を差別して差別されて、それがいつ暴走するのかわからない。
もちろんアジア人全体への差別もあるし。
なんだかもう差別や争いについて考えることに疲れてしまった。
人の傷に寄り添い受け止めようとすることにも疲れたしどうしたって理解しきれない。
私自身の思考は曖昧でもあり極端でもあり、基本的に平和を望んでいるけど破滅主義的な部分もあり、いつ何かの拍子にテロリストになってしまう可能性も被害者になる可能性もあると思っているので、なんか色々と嫌な具合に刺激され刺されて苦しい。本当に嫌だ。
楽しいホラー映画を観てゲロゲロパーになって回復したい。