劇場公開日 2019年3月22日

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「Spike Lee」ブラック・クランズマン vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0Spike Lee

2019年2月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

知的

人種差別というテーマを超えた映画。
KKKというカルト組織と、コロンビアカレッジの黒人学生集団との争いを中心として描かれているのだが、それを捜査するのは、黒人と白人の2人の警察官。明らかに、人種差別を中心のテーマに掲げています。しかし、人種差別を批判するのではなく、人種差別をめぐって争っている、2つの集団の愚かさをコメディテイストで描いている。つまりは、人種差別なんてもう超えていて、その次のステージに行こうじゃないかという、より大きなメッセージを感じました。

スパイク・リーといえば、時代の先駆者で、黒人文化を世に送り出す映画監督です。かなり大胆にフレーミングで表現したり、あまり飾らずにありのままを見せるのが特徴です。この作品にもその先駆者としての大胆さが見られました。特に黒人の集団とカルトの集団の描き方の対比。全く反対の方向に向かってマーチングしているように見えますが、ただ方向が逆なだけで、同じ道を歩いている。お互いに毛嫌いし反発しあっているが、やっていることはあまり変わらない。この表現が映画としては、とても新しく感じました。
今年のアカデミー賞の作品賞ノミネート作品を見てもわかりますが、過剰なまでの人種多様化のメッセージのこもった選考です。もちろん、残酷な歴史を見れば、その大切さは十分にわかりますが、人種多様化というのは、映画でいうと、なんのフィルターもなしに映画を平等に見られることが最終目標なんお出会って、一方が価値があるという見方自体がフィルターなのだと思います。それゆえ、今回のスパイクリーの作品は、黒人社会がまだまだ認識されていないのはわかるが、社会を世界をもっと大きな目で見て、人種差別なんか乗り越えて、もっと本質的な所、もっと本当に美しい所、もっと本当に面白いところをちゃんと見て行こうぜ、というメッセージが強く込められていた気がします。

それ以上に、スパイクリーの作品には嘘があんまり感じられない。この作品も、実際に起きた事件を題材にした作品ですが、コメディーも入ったドラマタイズされていて、ストーリーは完全にフィクションなのもわかります。しかし、ストーリーの衣になっている、役者たちの演技やその周りの環境がとても自然で嘘を感じない。だからこそ、序盤は笑えながらも、中盤から後半にかけて、表に出てくるテーマを真剣に考えることができる。
だから、長年を通して先駆者的な作品を作ることができるのだろう。

vary1484