帰れない二人のレビュー・感想・評価
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聞き取れない山西方言
現代中国で、現代中国の陰の世界を舞台に男女の情念を描く映画というだけでも驚きだった上に、見事に映画である。しかも国や文化を超えて女と男とを見事に描いている。しかし、聞き取れないセリフが多かった。四声は絶対普通话ではないぞ。
現代中国版エレジー。女渡世人のかつての恋人を想う情の深さが心に滲みる。
ある出来事のため、現代中国の経済発展の波に乗り損ねた男女が、お互いへの想いを抱えつつ、2001年~2018年の間、心理的、物理的に彷徨う物語。
特に勝ち気だが、情の深い女チャオ(チャオ・タオ)のヤクザ者だった恋人ピン(リャオ・ファン)への深い想いと行動は滲みる。
水没前の三峡ダムの周囲や人々の風景を始め、加速度的に経済発展していく現代中国の姿と対比される様に描かれる、徐々に齢を重ねていく二人の姿が侘しくも切ない。
ストーリー展開がやや雑な点が残念な感はあるが、見応えのある作品。特に彼らと近い年代の者には響くものがある。
ジャンクーが描く中国の21世紀は悲劇だった
「長江哀歌」「罪の手ざわり」の二本で早くもマストな監督の一人となったジャ・ジャンクーの新作。これを観ないという選択肢はない。
2001年から2018年、惚れた男に、そして社会に翻弄されながらも気丈に生きる女性チャオ(チャオ・タオ)を通して21世紀の中国を俯瞰する。
変わりゆく時代から忘れ去られたような内陸部の閉塞感、そしてあまりにも広大な大地が強烈なインパクトを残す。
報われることがないラストが悲劇を決定付けた。結局、何も変わらなかった、何も得られなかったのではと…
これはジャンクーの母国に対する思いをストレートに伝える傑作。彼の描く21世紀は冷たく悲しかった。
非の打ち所なし
イヤな人にはどうしようもなくイヤでしょうけど、私の好みでした。まず2001年のシークエンス、中国映画のことはよく知りませんが、昔見た薄氷の殺人みたいな淡々とした空気いいねーと思いつつ、ミニスカ吉行和子とピコ太郎カップルが面白がらせようとしているような気がしてならないモヤモヤ感のまま投獄。出所後、すっかりオバちゃんになった吉行和子、でもヤンチャな性格は変わらず寸借詐欺したり、置き引き犯をトッチめたりしてあースッキリ!行きずりの男について行き「ホントは雑貨商なんだ」という男に「いいじゃない」だって。和子カッコいいー!そしてその後この映画一番のビックリポイントUFO!これでこの監督大好きになりました。その後はもう書かない!全部いいから!普通に男女の機微を描くだけでも秀作だったろうに要所要所のおかしな映像が魅力過ぎました。これから過去作も漁ってみまーす。
確かに集大成と言われれば集大成
見終えてそうだよな、集大成といえば集大成というような構成なのだけど、頭ではそう思いつつもも、なんか物足りない感じがするのは、ひょっとしてもっと大胆に尺の長い物にしたらよかったのでは、ということなのかもしれない。
切ないが、少し笑ってしまう
日本の昔のノスタルジックなメロドラマを観るようだった。
開発を期待して賑わう街。
渡世人。この言葉を若い人は知ってるのか。
その社会での男女の物語。
少しありがちだが、男を庇って、刑務所に入って、その間に男に他の女が出来て…。
街は刻々と変わり、チャオチャオがひとり置いてけぼりのような感覚になるのは当然だろう。
列車で知り合った男に惹かれそうになる微妙な心の動きも秀逸だ。
しかし、また、チャオチャオを頼るガオ・ビン。
そして、プライドなのか、また、立ち去ってしまう。
チャオチャオは追いかけようとして、戻ってしまう。
こうなると腐れ縁だ。
僕は、必ず、ガオ・ビンは、チャオチャオの元に戻ると思う。
チャオチャオもそう思ってるに違いない。
多分、世界のあちこちに、こんな物語があるように感じさせる。
だから、切ないと言うより、少し笑ってしまう。
なんか、男女の腐れ縁の、人間臭い話には、国境はないんだと思った。
成り下がり
山西省大同という炭鉱のある街の顔役的なビンと、その女チャオの関係を描いた2001年4月2日から2018年1月1日までの話。
凄い人と称されるビンが若いハングレの群れに襲撃されて、それを止める為に発砲したチャオが、彼を庇い銃の出所を黙したことから5年間服役することになりすれ違っていくストーリー。
基本しっとり、まったりな流れだけど、出所後のチャオの描写とかちょっとユーモラスな感じもあったりと意外なところも良い感じ。
見捨てられない、諦められない女と甲斐性の無い男のもはや因縁のようなタラタラストーリーで、なかなか面白かったんだけどラストであれれ?
まあその終わり方もありだけど、その空気感で終わりですか?そんな軽い話?とちょっとすかされた気分。
いつも通り最高
今作は『長江哀歌』などこれまでのジャ・ジャンクー作品と似ている。しかし、小津安二郎の映画がどれも似たような話でも面白いのと同じように、それがマンネリとは感じない。やっぱり今回も2000年代初頭のダンスは超絶ダサいし(葬式の時の社交ダンスが最高)、UFOは飛ぶし。そして映画が終わったときには人生の機微に思いを馳せ感動している。これまでの作品と同様に傑作です。
個人的には『薄氷の殺人』が大好きなので監督のディアオ・イーナンと主演のリャオ・ファンが出演していたのもテンションが上がりました。
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