バハールの涙のレビュー・感想・評価
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この作品には撮る必然性がある
「ラッカは静かに虐殺されている」「ラジオ・コバニ」に続く自主企画「シリア発見」の第3弾。今作は完全なフィクション。これらの作品を観るにつれ、シリア内戦、アサド政権、IS(イスラム国)などについてわかった気になるから逆にこわい。
主人公のバハールはクルド人の女性武装部隊の隊長。アサド政権やISの暴挙に触れたフランス人の女性ジャーナリストが彼女を追う。バハールの回想を通してISによる理不尽な殺戮、暴行、人身売買、男の子たちの洗脳(戦闘員の養成)などを知ることとなる。
女性たちがこれほど大きなものを背負って戦っていたとは…
もうめちゃ勉強になるし、適度にエンターテイメントでもあり、全編緊張しながら観た。文字通りの傑作であり、今年のベストテン候補に一番乗りだ。
☆☆☆★★★ フランス人戦場ジャーナリストのマチルド。 彼女が伝え...
☆☆☆★★★
フランス人戦場ジャーナリストのマチルド。
彼女が伝えるのは、ISに性的奴隷とされながらも逃げ出し。現在は女性部隊で隊長として闘うババールの姿。
終盤の《自由への20歩》から、ラストの衝撃まで。映画は一気に駆け抜ける。
危険を冒してまで真実を発信する人が居なければ、平和ボケの我々には本当の真実は知る事が出来ない。
ましてやネットの前で、【ワンクリック】しただけで真実を知った気になり。「はい論破!」等と捲し立てては、いい気になっている輩に至っては…。
とにかく、その力強さに圧倒される作品でした。
2019年1月24日 シネスイッチ銀座1
大大大好きファラハニ詣で。 そして世界の現実を垣間見る。
ファラハニを観たくて。観たくて観たくて。
あの『パターソン』のファラハニ。
柔らかな視線、時折見せる虚ろなまなざし。
美しい。ほんとに美しい。
そんな人が立ち上がる。戦う。
戦うことでしか取り戻せない過去がある。
戦うことでしか得られない日常がある。
それにしても凄まじいこの世界の現実。
その現実を伝えようとする女性カメラマン。
ラストシーン、笑顔のないお別れが強烈に印象的。
抜き差しならない世界の現実があのシーンで重く迫ってくる。
【哀しく、強く、美しい女性たちの物語】
敢えて、ISには触れずに感想を。
ある日突然、絶望の淵に落とされた女性たちが、這い上がり強く生きていく未來への希望を紡ぎだす物語。
銃を担ぎながら、”女 命 自由”を歌う女性たち。特にヒロインと女性ジャーナリスト(稀有なジャーナリスト魂を持った実在の人物がモデル)の佇まいが良い。
ゴルシフテ・ファラハニは「パターソン」でそのエキゾチックな美しさに圧倒されたが、今作でもその美しさは変わらない。
いや、母としての強さを表現した今作の方が心に残ったな。
クルド人の哀しい歴史知識があるとなお良いが、無くても大丈夫です。近くに上映館がある方は是非。
<2019年1月19日 劇場にて鑑賞>
2019年ベストムービー!
今年最も見逃してはいけない1本!…だと思う。
テーマはとても重いが、力強い映像と"彼女たち"に目が離せない2時間…。
素晴らしい映画だ。
*原題は、フランス語で"Les filles du soleil"、
英語で"The girls of the sun"だ。
この手の映画は…
非常に後味が悪い。殺し合うのは当事者だが、使用する武器は西側だったり、ロシア圏のものだったり、車は日本製だったりする。それが破壊する中東世界の範囲は依然広がり続けるばかり。本当の敵はライフルを構える者たちではなく、その背後でビジネスとして蠢く者どもである。奴等は戦場から遥か遠くにあるパソコンの前に座って投資先を探すばかりである。全くやり切れない。
それにしても主人公を演じるゴルシフテ・ファラハニはジム・ジャームシュの「パターソン」ではアーティスト志向の奔放かつ我儘な妻を演じ、今回は全く相入れることのないハードな元奴隷のクルド人戦士を演じ、この女優の演技の幅には魅了されるばかり。
戦うことを選んだ女性たち
身を穢され、家族を失い、心も壊れかけ、それでも唯一残った希望のわが子を救い出すべく、銃を手にした母の決意。
あれだけの過去を抱えた彼女たちに、不戦を説いても意味がないだろうなあと思う。取り返すための戦いなのだから。
前線で戦う彼女たちに帯同する女性ジャーナリストの存在もあり。危険にさらされながらも真実を伝えようとする彼女にも称賛を。
やっぱり、ムリ!
あの戦場に、何日滞在できるかしらと考えたんですが、やっぱり、ムリ。『あなた、閉所恐怖症?』『はい、今日から恐怖症です』って答えて、立ち去りたい私です。
クルドの問題は、極めて政治色が強く、およそ商業映画には、不向き。素人の私が、コメントすることさえ出来ません。ただ、たとえ世界が無関心でも、それを伝える意義は、大いにあるようです。
戦場ジャーナリストが拉致されると、自己責任が問われますが、何も知ろうとしない人の責任は、誰が、どのように贖うべきなんですかね。
個人的に、本作の主人公は、スクリーンに足を運んだ、御見物の皆さんだと思います。皆さんなら、どうします?。
どうも、バハール姐さんは、特定人物ではなく、クルド女性そのものを象徴しているようです。どんなにつらくても、どれ程仲間を失っても、クルドとして生きていく過酷さを、擬人化しているようです。バハール姐さんに、私達ができることって、何だろう?。
あの後、バハール姐さんは、どうしているんですかね。バハール姐さんが、平穏に暮らせるように、祈ることぐらいしかできなくて、ごめんね。
戦争の理不尽さ
鬼畜のようなあの真っ黒な集団、顔が見えないから尚更、血が通った人間に思えない。
いつの時も戦争は理由も反論もネジ曲げられ、弱い者へ攻撃する。
映画として感動とかより、現在も同じような環境にいると知らされる。
そして母はやはり強い。
なぜ!彼女たちは、闘うのか?
片目の女性記者と女性戦士バハール
2人が出会ったとこから映画は
はじまる。
クルド地区から家族ごと拉致され
性奴隷にされたバハール。
少年兵士とされる息子を取り戻すために
闘う。
見応えのある作品だ!
人間のありように抗う希望
日本の作詞家で松本隆という人がいる。松田聖子が歌った「瑠璃色の地球」で彼は「争って傷つけあったり人は弱いものね」という歌詞を書いた。24歳のアイドルが歌うのだから、争いと言えば仕事や人間関係のもつれなどを指しそうだが、歌のテーマが地球であることを考えれば、戦争のことを言っているのだとわかる。つまり松本隆は24歳の松田聖子に反戦の歌を歌わせたのだ。それは大変に画期的で価値のある試みだったのだが、当時の若者たちに松本隆の思いが伝わったのかどうかは定かではない。
さて勇敢で愛情に満ちた女戦士バハールが本作品の主人公である。高等教育を受けたインテリであり、銃で敵を撃ち殺すような女性ではない。しかしそうせざるを得なくなった状況が、長めのフラッシュバックで語られる。ISによる人権蹂躙である。人は己(おのれ)の欲望のために他者を犠牲にして意に介さない。宗教はもはや大義名分に過ぎず、餌食となるのは常に弱い人間である。
フランス人の女性従軍記者であるマチルドは、言論は無力だが、それでも伝え続けなければならないと、かねてからの自分の覚悟を述べる。従軍記者にとって毎日が小さな勇気を試されることの連続だ。建物の角を曲がるだけでも、気力を振り絞らなければ曲がれない。そこには銃弾の雨が降っている可能性があるからだ。
それでもマチルドはバハール隊長一行の後に続いて角を曲がる。そこに待っているのは死なのか、それとも希望なのか。多くの場合はそのいずれでもなく、更に危険な日々が待ち受けているだけだ。危機が去って希望が湧くまでには、まだ長い道のりがある。
マチルドはバハール隊長の姿を世界中に発信する。この修羅場を地上のすべての人々に伝えたい。届け、平和の願い。そして与えたまえ、母と子の安寧の日々を。
映画ではたしかにその思いは伝わってきた。ただマチルドは、ニュースを受け取った人はクリックして終わりと言う。我々も同じように、映画を観て終わりになってしまうのかもしれない。しかしいつか日本がトチ狂った暗愚の宰相によって戦争を始めようとするときには、断固として反対票を投じようと思う。
人間のありようは松本隆が書いたように、たしかに弱くて醜いものである。しかしどこかでそれに抗う希望があると信じたい。そういう映画であった。
魂を揺さぶられる
“奴隷”から逃げだせた女性が、人間であるために戦いに立ち上がる。こういう悲惨な現実と勇気があるという「真実」を伝えるために、命懸けで記者として従軍する。
真実の凄まじさに驚愕するとともに、戦場で銃を持つ勇気もカメラを持つ勇気に、心底魂を揺さぶられる。
中東の抱える様々な問題
アフリカもそうだが、中東の国境には直線が多い。
当時の欧州強国やロシアが、オスマン帝国を攻撃し、石油利権を求めて、民族や部族、集落、宗派などに関係なく、傀儡政権をベースに自分たちに都合の良い、国境線を引いたからだ。
人は自然の地形を利用して住み、生活するものだが、川や湖、中東の場合は、砂漠の形状やオアシスなどがベースになって然るべきだ。だが、そんなことは御構い無しだったのだ。
だから、3000万人もいるクルド人は、複数の国に跨って住み、国は持たず、民族信仰と融合したイスラム教を信仰するクルド人少数派のヤジディ教徒は異教徒として、欧米と結びついたイスラム主要宗派から酷い迫害を受け続けている。
更に、この地域の「伝統的な」女性の社会的な地位の低さは、レイプや、一夫多妻制、生活ルールまで、ある意味、奴隷状態と言っても過言ではないレベルかもしれない。
この映画には、こうしたものが網羅されている。ISの暴挙や、それと戦う女性戦士達の勇気に、胸や目頭は熱くなる。
しかし、これは単なる戦争映画ではない。僕たちが忘れることなく、本当に伝えなくてはならないことは、こうした暴力の背景にあるものと、少しずつで地道かもしれないが、改善を働きかけることなのではないかと思う。
30m
ISと戦うISに旦那を殺され息子を連れ去られたクルド人女性部隊隊長バハールと、同行する旦那を亡くした隻眼のフランス人女性記者アマンドの話。
半分以上はバハールが兵士になる前の過去の話で回想や彼女の人柄の紹介的に見せていく流れ。
アマンドが取材したレポートという意味合いもあるのかも。
戦闘シーンは余りないけれどその部分については少し安っぽく緊張感が足りないのは残念ながら、バハールの経験してきた出来事の数々は彼女以外にも同様の経験をしてきた女性達を代表した声でもあり悲しく重く、銃を構えた子供は保護するべき対象か敵なのか…やり切れなさと憤りを感じた。
同じ時代、同じ空の下
前半は、過去と現在の交錯や、背景などをキャッチアップすることが大変で、少ししんどくなったけれど、中盤から後半、過去と現在の話が大きく展開し始めたら、もう目が離せなくなった
奴隷だった過去の脱出劇の一部始終は、観ている私まで緊張し、気づけば両手を強く握りしめていた
彼女たちの強さ、彼女たちの生きようとする力、その凄まじさ
(そんな中、ニカブってああやって着るのかって冷静に思ったりもしたけど。着てる女性を間近で見たことはあるけど、ああいう風になってるとは。)
ラストが、絶望に打ちひしがれる終わり方じゃなかったことに救われた
そして、劇中、女性たちが歌う歌(監督が取材や実際に歌われる歌を基に作ったらしい)が、とても心に残った
悲惨さより勇気がテーマ
人は悲劇から目を背ける、が、伝え続けなければならない、というマチルドの言葉に深く頷きました。この世にこんな辛い体験をした女性達がいるなんて心が痛みます。が、ストーリーは悲惨さより勇気に焦点を当て、悲劇的な結末にはならなかったことが良かったです。全く素晴らしい作品!
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