「日本でもありそうなリアリズム」ドッグマン りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
日本でもありそうなリアリズム
イタリアのさびれた海辺の町。
お世辞にも綺麗といえない砂の広場を中心にして、古びたビルが立ち並んでいる。
小男のマルチェロ(マルチェロ・フォンテ)が営むドッグサロンもその一隅にあった。
離婚したものの妻やひとり娘とは良好な関係で、周囲とも良好な関係であるが、ただひとつ、切っても切れない腐れ縁が続いていた。
それは町の乱暴者シモーネ(エドアルド・ペッシェ)との関係。
日々騒ぎを起こすシモーネとは古くからの友人関係で、無下に関係を断ち切ることが出来ずにいた・・・
というところから始まる物語で、映画はふたりの関係、町の様子を丁寧に描いていきます。
丁寧すぎて、まだるっこしい感もあるのですが・・・
くすんだ色調で撮られた画面を観続けていくと、どんどんと憂鬱・陰鬱になっていきます。
外国イタリアのハナシではあるものの、この手の物語は、最近の日本映画でも地方都市を舞台にしてしばしば描かれているので、遠い外国のハナシとは思えず、遣り切れなくなってきます。
マルチェロはシモーネのことを友人と思っているが、シモーネはさにあらず。
シモーネが主人で、マルチェロは飼い犬、忠実な下僕。
虐待された犬が主人に反撃する・・・という展開になるのは早々に予想がつくが、明確に反撃し始めるのは映画も終盤になってから。
しかし、その反撃も、「怒り心頭に達し、暴力には暴力だ!」という、わかりやすい、カタルシスが伴うものではなく、空しく虚しいもの・・・・
マルチェロが手入れしている犬たちが、マルチェロの心情を察して、シモーネを集団で襲って食い殺す・・・ぐらいの展開だったら、もう少しスッキリしたと思うのですが、そんな展開だったら別の作品になっちゃったでしょうね。
主役のマルチェロ・フォンテ、誰かに似ていると思っていましたが・・・あ、藤原釜足!
古くて申し訳ない・・・