劇場公開日 2019年3月22日

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「男性優位主義に戦いを挑む20世紀の『ローグ・ワン』」ビリーブ 未来への大逆転 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0男性優位主義に戦いを挑む20世紀の『ローグ・ワン』

2019年4月15日
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鑑賞方法:映画館

クイーンズの貧しい家庭に生まれ育ったルースは苦学の末ハーバードに進学するがそこはやはり男性優位主義の世界。それでもルースは首席で卒業しただけでなくコロンビアも卒業、申し分ない学歴を手に入れながらもどこの弁護士事務所も彼女を雇わない。結局大学教授となったルースはある日税務弁護士である夫マーティからある訴訟記録を知らされる。それは母親を介護する独身男性が原告となって介護費用の控除を求めた訴訟で、介護費用の控除は女性にしか認められないとして敗訴したもの。この訴えが男女不平等を覆すきっかけとなると直感したルースは弁護人を買って出ることにする。

現役のアメリカ合衆国最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの若き日を描いた実録ドラマ。男性社会に臆せず飛び込み時代と噛み合わなくなった法律を変えていこうと奮闘する20世紀を舞台にした『〜ローグ・ワン』と言っても過言ではないでしょう。50〜70年代にかけての男性優位社会で虐げられる女性達の粘り強い戦いを描くのであれば1クールくらいのドラマにぴったりの題材ですが、本作はその辺りは意外とサラッと描き一つの訴訟での攻防に焦点を絞ったタイトな作品。ルースを支える学生達、夫のマーティと娘のジューン、人権保護団体の代表メル、ベテラン弁護士ドロシー、原告のモリッツ、様々な人に支えれて戦うルースの姿が凛々しくてカッコいいです。

監督は久しぶりに名前を聞いた気がするミミ・レダー。登場人物の衣装が全部カッコよく、壁のポスターにもさりげなく皮肉を滲ませる繊細なユーモアも見事にハマった良作に仕上がっています。役者陣も全員素晴らしいですが特に印象的なのはモリッツを演じたクリス・マルケイ。悪役や物分かりの悪い父親役が多い役者さんですがここでは不器用で優しい男を自然に表現していて好印象。あとはルースの娘ジューンを演じたカイリー・スパイニー。彼女は『パシフィック・リム:アップライジング』の準主役のアマーラをやってた女の子。理論派の母親とぶつかり合う行動派で鼻息の荒い女の子を生き生きと演じていて、やっぱりこの子はスターになるべき女優さんだなと改めて確信しました。近々公開予定のドキュメンタリー『RBG 最強の85才』と併せて鑑賞したい作品です。

よね