「美しい西部劇」ゴールデン・リバー zaaaawaaaaaさんの映画レビュー(感想・評価)
美しい西部劇
原題「The Sisters Brother」が冒頭から画面を覆って不可視に徹している表現からすると、邦題の「ゴールデン・リバー」タイトルは相関性がいささか気になる。しかし、これはこれで視点としては良いのかも知らないと思うのは、それが映画終盤で薬品の反応によって川の中が輝き彼らの求めていた黄金が可視化するからである。つまり、この映画において彼ら、父権的な暴力の影響化から人生を取りこぼした者たちがユートピアへの到着を意味し、「ゴールデン・リバー」として可視化することによってカタルシスに達するからである。
しかし、その黄金によって事故は起きるのだけれど、それは逆説的に黄金と暴力との倒錯的な魅力によって位置付けられ、彼らもあらかじめ用意されていたように運命に従うことしか許されない。父権的な呪いが血縁として、その彼らの体に血が流れているのだから。
この映画において二番目に魅力的なショットは兄が歯を磨く身振りの清潔さにある。そして幸い命をとりとめた兄弟は当然のこととして母の元え家に帰る。清潔さが主題のこの映画で、一番素晴らしいショットがようやく弟に訪れる。それは母の入れる湯に入った弟の入浴である。このショットで、ようやくこの映画は彼らを暴力から解放して己の時間を始めることを許す。
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