劇場公開日 2019年1月25日

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「難解そうで意外に直球の王道」サスペリア ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0難解そうで意外に直球の王道

2021年8月18日
iPhoneアプリから投稿

目の前の日常生活が崩壊していく恐怖をホラー映画でバグらせ太郎!

ネタ(オチ)はともかく、その手前までは楽しめた。
サスペリアの2は夢に出るほど好きなサイコホラーですが、スタイリッシュな怪奇ものの1は普通。
さらにリメイク版である本作は舞踊団、惨劇、隠し部屋といったお題だけ借りたさらに別物。

こういう意味深で思わせぶりな引っ張り方だと、どうしてもネタを明かした瞬間に気まずくなるのは仕方ない。そこを画面のパワーで補ってくるクライマックス。
細かいとこはわかんないけど、設定的に進撃の巨人(北欧神話)を想起させる。

博士に関しては、ラストでいちおう最低限の説明はしてくれる。台無しでは?と思わないでもないけど。

「母が見た末っ子の罪」is何、は明示されないので結局よくわからず。まぁ性的な事柄なんだろうか。
どのみちリングのホラービデオみたく明かしたところで誰も得しない、野暮ってやつかな。
でも主人公にとって怪物になったのは母のせい、逆に母からすれば彼女が恐ろしい異物に見えたから罰した、そのドラマこそが結構重要な部分だと思う。
それが明確に言及されないのでということは主人公の「本性」もぼんやりして判断を留保されたまま終わる。観た人がどちらに受け取るかに委ねたい、ということなら何も言うことはありません。

マザーとマダムも母娘ってことなりそう。スージーとマダムでオカルト版の「キャロル」みたいな訳には行かないのね。。

とはいえオチに至るまでの過程は楽しめたし、ロケーションとか映像はいいので、これなら劇場に行ってもよかったなと思う。
ただ膀胱の限界に挑戦してくる150分超え。。その割には、音と映像を重ねて前後のシーンのつながりを伝えていくとか、寮の似たような室内でも誰なのかわかるように前もって衣装を強調しておくとか映像的な配慮は行き届いている。
なので一見難解そうに見えても、わかりにくいとか場面の意図がわからなくて混乱するとかはない。偏差値は高い。

でも結局のところ男性的なストーリーの型に収まっていたように見える。偽りの父と別れ、真実の父に巡り合って一人前になる話、と変換するとたちまちハリウッドの王道パターン。
それ自体が悪いわけじゃないけど(むしろ好き)、問題は「男に向けた男の話」を女の身体(めちゃくちゃ脱いでる)を利用して語ってるという構図。
女の値打ちはあくまでその表象にあり、中身は興味ないってそれ古典的ミソジニー仕草。。

一見つよつよな女たちの話に見せかけて、根底には女が怖い、女の肉体(母性)に飲み込まれることが怖い…と。あっハイ🤭

「転移」は本作の重要なテーマですが、実はその範囲は作り手から始まっていた!という壮大なオチ。
そのため母娘のストーリーでありながら、むしろ男性に刺さりそう。いっぽう女の心にはあまり刺さらなそう。

ipxqi