「ジョン・ポリドリの悲劇」メアリーの総て kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ジョン・ポリドリの悲劇
多分ポリドリの物語もいつかは映画化される予感がする。エンディングにおけるテロップによれば25歳でうつ病となり自殺した医師ポリドリ。バイロン卿による著作とされてしまった「ヴァンパイア」はメアリー・シェリー著による「フランケンシュタイン」と並んでヨーロッパにおけるモンスター小説。二人の才能がバイロン卿の屋敷で開花する奇跡も見逃せない。
メアリーの成功は彼女の人生そのもののように描かれた本作。父と義母が経営する書店の手伝いをサボって実母の墓でひっそりと過ごす孤独な幼少期。やがてスコットランドでバクスター家の世話になるが、そこでは大自然の美しさと詩人パーシー・シェリーとの出会いを経験して、劇場にて電気を与えてカエルが動く見世物に興味を抱く。やがてパーシーが既婚者で子供もいることが判明してショックを受けるが、自由恋愛を吹聴する彼についていく決心を固めるのだった。
フランケンシュタインがどうやって誕生したのか、メアリーの壮絶な半生(とはいっても10代の2年間程度)が孤独と絶望を生み与えた。幼子の死、自由すぎる恋愛観、バイロン卿の悪魔的な性格を経験し、ジュネーブのバイロン邸で出会った医師ポリドリによる科学的知識を加えて彼女の蘇生願望が育まれていった。こうして彼女の半生すべてがフランケン誕生に関わっていて、観客の知的好奇心も満たしてくれるのです。直接的な引き金となったのはポリドリが「退屈しのぎに1人ずつ怪奇談を披露しよう」と提案したことでしたが、メアリーの心の中にあった書きたい欲望はクレアの絶望も伴って開花してゆく・・・
女性の地位が確立していない19世紀の出来事。「読者がいなければ思想はただの言葉だ」なんて台詞もありました。また、メアリーの実母による著作も興味惹かれるのですが、自由主義を標榜する両親のメッセージも感じられる。事実、彼女が書いたフランケンをどこの出版社も取り上げてくれず、唯一出版を取り付けた会社も「匿名であること、パーシー・シェリーの序文」が条件を押し付けてきた。世間はパーシーの著作であると信じたが、それでもメアリーの父は彼女が書いたものだと確信し、出版パーティを開く。この父の存在がなければどうなっていたのか。
女性の地位向上と自由主義。おどろおどろしい作風にはこんな秘話があった!といったテーマにただ感動。孤独と絶望が怪物を産みだしたことは必然であったことに驚愕。スコットランド(ロケはアイルランド)の自然、雷鳴、鬱陶しい雨、そしてエル・ファニングの美しさが物語を盛り上げていました。結局は救われる内容でしたが、一方のジョン・ポリドリ(ベン・ハーディ)は・・・悲運としか言いようがない。
Kossy さん
新年早々、素晴らしいレビュー👏
とても勉強になりました!
2020年もkossy さんのレビュー堪能させていただきます🍀
ミーハーな私は本日公開エルの
ティーンエイジスピリットをこれから観て参ります🍀