「エル・ファニングの内面渦巻く感情に、ただただ圧倒される」メアリーの総て ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
エル・ファニングの内面渦巻く感情に、ただただ圧倒される
「フランケンシュタイン」の物語は、怪奇ホラーという言葉では片付けられないほど悲しく、哲学的で、「人間とは?生命とは?」といった領域にまで思索の幅を広げてくれる。これがとあるお屋敷で行われた暇つぶしの執筆ゲームとして誕生したこと、その執筆者が女性であったことで「真の書き手は誰だ?」と好奇の目で晒された逸話は有名だ。
本作は、一人のうら若き女性が世にも恐ろしい幻想譚を書き上げるまでの心の叫びを丹念に描き出した秀作である。女性ならではの苦難を等身大の感度で演じるエル・ファニングの熱演もさることながら、他にも男女問わず、あらゆる登場人物たちが為す悩みや悲しみに押し潰されそうになりながら生きる姿が胸を締め付けてやまない。手掛けたのがサウジアラビア初の女性監督という点も特筆すべきところだ。本作から発せられた光は、過去の一点のみならず、現代や未来さえも貫き、普遍的なテーマをありありと照らし出している。
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