「監督が意図しなかった何かが画面を通して見えてくる」私は、マリア・カラス MPさんの映画レビュー(感想・評価)
監督が意図しなかった何かが画面を通して見えてくる
オペラに関心がない映画ファンは、これを観るべきではないだろうか?
いや、違うと思う。マリア・カラスというソプラノ歌手が舞台で歌い上げる生の映像と音源を繋げていくこのドキュメンタリーからは、人間の喜びと悲しみ、怒りや後悔が、彼女の歌声を通してリアルに伝わってくるからだ。それは、希代の女優による熱演ファイルと同じ。そして、インタビューに応えるカラスの堂々とした態度からは、人生の表も裏も、舞台と同じ熱量でしか語れない、生まれながらの女優の悲しさが伝わってくる。カラスのファンを自認する監督が隠そうとしたものが、逆に、カラスの素顔を想像させてしまう皮肉。こんな想定外の展開が起こるからこそ、映画は面白いのだ。そして、現役時代がたった10年しかなかった伝説のプリマの半生からは、人生は決して長短では語れないことも教えてくれる。これはやっぱり、観るべき映画なのだ。
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