「【BVSC☆アディオス、そして、オラ】」ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【BVSC☆アディオス、そして、オラ】
ヴィム・ヴェンダースの「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」のレビュータイトルを、”音楽の原点”と書いたが、実は、なぜかは、こちらの映画で触れられるので、その精神的な背景は記したつもりだが、具体的なことは書かなかった。
キューバ音楽の「ソン」は、原住民が滅ぼされ、アフリカから奴隷として連れてこられた黒人が、作った音楽だ。アフリカの鼓動とヨーロッパの音楽が出会い、融合し、その後、ヨーロッパだけではなく、アメリカの音楽にも大きく影響を与えたのだ。
「なぜ、こんな悲しみの歌を、世界中の人々は支持するのか」
キューバ音楽ソンの多くが悲しみの歌だ。
ヨーロッパが進出してきて、原住民の多くを殺害、アフリカから奴隷として連れてこられた人たちが、現在のキューバ人の祖先だ。
独立のための闘い。
多くの同胞が死んだ。
もともといた原住民も含めて、ソンは鎮魂歌なのだ。
しかし、決して暗いことなどなく、明るく生きようとする力を内包している。
だから、「火事だ、火事だ、俺は燃えている!」と歌うのだ。
ソンは、悲しみを乗り越えたことを伝えるキューバ人に流れる血のようなものだ。
だから、決してなくならない。
歌は魂。
こうしたことが背景にあって、カール・マルクスの社会主義思想が、キューバに根付いたのかもしれない。
過度な利潤を追求せず、格差を好まず、暴力には屈せず、平等で、穏やかに暮らせる世界。
ハバナ・カール・マルクス劇場での”ラスト”・コンサートとは言うが、1999年のヴィム・ヴェンダースの映画撮影から、BVSCの多くが亡くなり、でも、新たなメンバーも加わった。
アディオスだが、オラ!
オバマが端緒をつけた国交正常化を、トランプが放棄してしまったが、再び、良い流れが来ることを祈る。
このBVSCアディオス公開前に亡くなったフェレールが、ヴィム・ヴェンダースのBVSCで、カーネギーホール・コンサートの後、「実は、ニューヨークは憧れだった。英語はこれから勉強する」と言っていたのを思い出した。
この音楽を聴きたい人は世界中にきっと多くいる。
次は、BVSCオラだ。そう信じている。