「小説の追体験のような感覚」ライ麦畑で出会ったら ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
小説の追体験のような感覚
『ライ麦畑でつかまえて』が大好きなティーンエイジャーが、舞台化の許可を求めに隠遁しているサリンジャーを探しに行く実話を基にした物語。監督自身の高校時代の映画化で、本当にサリンジャーを探し当てている。青春時代ならではの無軌道なエネルギーで突っ走る主人公は見ていて心地よい。
主人公も面白いがサリンジャーの住む街、コーニッシュの人々がまた面白い。主人公がサリンジャーについて尋ねてもみな知らないとしらを切る。中にはデタラメな道順を教えたりする人もいる。これは、街の人々がサリンジャーのプライベートを守ろうとやっていることらしい。サリンジャーと街の人々がどんな交流を持っていたのかが何となく透けて見えてくる。
主人公の境遇は、なんとなく『ライ麦畑でつかまえて』の主人公とも重なるところがあり、小説の物語の追体験のような感覚も与える。秋のすすけた風景も美しい。情緒豊かな青春映画だ。
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