劇場公開日 2018年10月27日

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「背後に"ベトナム世代"の顔がいっぱい見える」ライ麦畑で出会ったら MPさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0背後に"ベトナム世代"の顔がいっぱい見える

2018年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

幸せ

J.D.サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の主人公に自分を重ね合わせる高校の文化系男子が、自分で原作を脚色し、高校で舞台化することを思いつく。まず、この発想がいいし、サリンジャー自身に舞台化の許諾をとるため、彼がペンシルベニアからニューハンプシャーまで旅するという青春ロードムービーのフォーマットにも交換が持てる。行く手に何が待ち受けるか分からないという不安が、観客を否が応でも助手席に乗せてしまうからだ。まして、時代はベトナム戦争末期の1969年。若者たちの頭上に戦争の暗雲が立ちこめる中、それを振り払うにように旅に出る少年の背後には、かつて何度も映画に登場してきた"ベトナム世代"の顔がいっぱい見える。でも、本作には主人公ピーターの揺れ動くセクシュアリティの問題も描き込まれていて、今の時代にリンクする視点もちゃんと持っているのだ。好感度大の1作だ。

清藤秀人