「ジブリで培われたメソッド全開! 天才アニメーター高坂希太郎の才気を見よ!」若おかみは小学生! たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ジブリで培われたメソッド全開! 天才アニメーター高坂希太郎の才気を見よ!
不慮の事故で両親を亡くした小学生のおっこが、実家の老舗旅館で若女将として働くことにより成長していく様子が描かれたファンタジー・アニメ。
おっこの祖母、関峰子の少女時代の声を演じるのは『言の葉の庭』『君の名は。』の花澤香菜。
おっこの旅館のお客さんである大型トラックの運転手、木瀬文太の声を演じるのは『魔女の宅急便』『ポケットモンスター』シリーズの山寺宏一。
2003〜2013年の間に刊行されていた大人気児童文学をアニメ映画化。
宮崎駿の一番弟子とも称される天才アニメーター高坂希太郎が、15年ぶりに劇場用アニメーションの監督を手掛けた。
因みに彼が15年前に監督として手掛けた作品がロードレースアニメの傑作『茄子 アンダルシアの夏』(2003)である。
『茄子』を始めて観た時から彼のファンなので、本作も観たいなーとは思っていたものの、メインビジュアルに敷居の高さを感じてしまい結局見ずじまい…🌀
しかし!NHKで放送されると知り遂に鑑賞〜。
やはり食わず嫌いはよくない!尋常ではないクオリティの名作アニメでした!
映画の冒頭、お祭りの場面でもう心を掴まれる。
美術の美しさも素晴らしいし、モブに至るまで生き生きと描かれた人物描写はまさに名人芸。
衝撃的なトラック事故の場面もダイナミックかつ繊細な描かれ方がされており、この時点でもう名作決定という感じでした。
おっこが旅館で働くようになってからの、日常描写の演技の巧さは異常なレベル。
卵焼きの瑞々しさや、度が強いことがわかる眼鏡の描き方など、細部に至るまで手が抜かれていない。
アニメーションの楽しさを決める異化効果をここまで堪能させてくれるアニメ監督が、国内に何人いるのでしょう?間違いなく高坂さんはそのトップランナーです!
このアニメーションのクオリティの高さに冒頭から涙目になっていましたが、シナリオも道徳性の高いもので非常に感動的🥲是非子供たちに観て欲しい。
とにかく、おっこの成長描写の一つ一つが丁寧で感動するんです✨
はじめは虫や爬虫類を怖がっていたおっこが、やがてそれらを平気に扱う様になる様子は、わかりやすい手法ではあるが、上手い。
両親の死をうまく受け入れることができていない様子をさり気なく描き続け、終盤のエピソードで、遂にその死を受け入れることができる様になったということを、説明台詞などではなくアニメーションのダイナミズムと演出で魅せてくれるところなど、うーん、やはり上手い!
話題になるのもわかる素晴らしいアニメだが、問題点もあるあると思う。
幽霊のウリ坊と美陽の扱いが、少し物足らないというか、エピソードが不足している感じが否めない。
最終的に成仏するわけだが、やはりウリ坊とおっこの祖母・峰子との絡みが見たかった。ウリ坊と峰子がおっこを通じて交流し、その結果として成仏するとか、そういうのが欲しかった。
美陽も同様に、真月とふれ合うエピソードが一つあると良かったのに。
あと、事故の加害者である木瀬一家が泊まりに来るというシークエンス。
これは映画オリジナルの展開らしいが、個人的にこの部分には乗れなかった。
鈴鬼によって面倒事が呼び寄せられるという説明が入っているので、展開的な不自然さはそこまでないといえばないのだが、予約してきた段階でお婆ちゃん気付かなかったのかいな?とかちょっと細かいところが気になってしまった。
水嶺さんとのショッピングに行くというシークエンス。このシークエンス自体は非常に良かったが、試着室で「ジンカンバンジージャンプ」という頓珍漢な曲とともにファッションショーをするというシーンだけは、過剰に子供受けを狙いすぎている様な気がして受け付けなかった。映画全体のカラーに合っていないのでは?
そして、やはり一番勿体ないと感じたのは、とても根源的なことなのだが、メインキャラクターのビジュアル。
おっこ、ウリ坊、真月、美陽、鈴鬼というメインキャラのデザインは原作小説のイラストに忠実なのだが、やはりこのデザインには抵抗を感じてしまう。いやまあ子供向け作品なんだから、そんなことを言うのもお門違いなんだけどね💦
メインキャラ以外のデザインは、高坂さんの持ち味でもあるジブリチックなリアリティのあるデザイン。
好みの問題と言われればそれまでなのだが、可愛いキャラデザとリアルなキャラデザが混ざり合っていて、なんかチグハグな感じがしてしまう。
おっこと峰子さんが同じ血筋の人間に見えないんですよね。
原作から乖離してでも、メインキャラをジブリ風なデザインにしていれば、もっと劇場にお客さんが入ったかも。
何はともあれ、日本に新たな名作アニメが生まれたことは間違いない!
見終わった後には頬を涙が伝い、心が洗われること間違いなし!
これだけの名作を作った高坂希太郎監督の今後の活躍に期待してます!!
泣いてしまう大人が続出ていうニュースを見て、冷やかし半分で劇場に足を運んだんですが、見事にやられてしまいました。原作の絵柄の制約がありながら、大人も感動させる作品に仕上げるなんて高坂希太郎監督はさすがです。
「若おかみは小学生!」を見てから、なんだか感動体質に身体が変化してしまって、映画がより楽しめるようになりましたよ。
「若おかみは小学生!」は、ダウンロード版を購入して、iPhoneでいつでも見れるようにするくらい好きな映画になりました。
> 彼が15年前に監督として手掛けた作品がロードレースアニメの傑作『茄子』
へええ。そうなんですね!
映画好きの知人が強く推してくれる「茄子 アンダルシアの夏」。まだ観られてないのだけれど、必ず行こうと誓っている一本です。
教えてくれて、ありがとうございました。