劇場公開日 2018年9月21日

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「大人の鑑賞に堪える傑作」若おかみは小学生! 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大人の鑑賞に堪える傑作

2018年9月30日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

 いい作品だと思う。変に説教臭くもなく、子供の人格を軽んじることもない。
 小学生でも高学年になると人間関係を敏感に意識するようになる。世界観はまだ形成されていないから、大人以上に人間関係に一喜一憂する毎日を過ごしているはずだ。どこかで視野を大きく広げることで、人間関係の渦の中から抜け出し、自分も含めた全員を客観視できるようになり、孤独にも耐えられるようになる。

 実は鑑賞前には、小学生にして旅館の女将になった女の子が特異な能力を発揮するマンガみたいな作品かと思っていた。レビューを読んで、意外とそうではないかもしれないと思って、先入観を捨てて観ることにした。
 映画館にはたくさんの子供たちがいて、映画が始まる前まで賑やかだったが、はじまると間もなく静かになった。小学二年生以下くらいの子供は1時間もすると飽きはじめていたが、三年生以上くらいの子供たちは、引き込まれるようにスクリーンに見入っているようで、終幕近くにはたくさんの子供たちが泣いていた。
 自分のことで精一杯だった女の子が、旅館での経験を経て他人を許す寛容さと優しさを体得していく成長物語であるが、その成長ぶりを子供たちにぜひ理解してほしい。

 狂言回しとして登場するウリ坊、みよちゃん、鈴鬼の役割も重要で、物語としてとてもよく出来ている。声優陣もそれぞれの役柄にぴったり合っていて、自然に鑑賞できた。主人公の声を担当した小林星蘭もよかったが、相手役ともいうべき真月の声の水樹奈々が、声優としての職人芸を見せてくれたと思う。
 世界観といい、プロットやストーリーといい、子供たちだけではなく大人も含めた、小学三年生以上のすべての人の鑑賞に堪える傑作である。

耶馬英彦