旅のおわり世界のはじまりのレビュー・感想・評価
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前田敦子さんの素の様な演技がとても良かったです (いい意味です 笑...
新鮮な黒沢監督映画と新鮮な前田敦子
異国の地の孤独と恐怖の中での成長
前田敦子とウズベキスタンへ
迷子の迷子の子猫ちゃん
ウズベキスタンのアイダール湖に住む幻の巨大魚を取材する為にやって来た歌手志望のテレビレポーターの話。
ADとにメラマンに現地人通訳とドライなディレクター&主人公という組合せでやって来たウズベキスタンで、取材が上手く進まない中、自身の望む姿と現実とのギャップに悩むストーリー。
一見何でも一所懸命に取り組んでいるようだけど、巻き起こる出来事の中であるべき姿や自分の姿勢を考えると共に気付いていく。
一番の気付きが通訳を介したセリフで示されてしまうのがちょっと勿体ない気はしたものの、感情面で起伏は少ないなりにしっかりと見てとれる変化や開放がなかなか良かった。
気持ちは態度に醸し出され、感じるとそれなりの接し方になるよね。
豊かな映画
面白かった!! ウズベキスタンの風光明媚な街や自然と、路地や地下道が過剰に不穏に感じられる旅行者の不安さとサスペンスを合わせたスリリングな演出と、日本のバラエティ番組の海外での傲慢さなど現代日本の風刺と、主人公への真っ直ぐと意地悪を行き来するような視線とが共存する映画。こんなの撮れるんだ…すごい。
近年ちょくちょく話題になってる日本のバラエティ番組の海外での振る舞いの傲慢さや(存在が幽霊みたいに描かれる)日本の恋人とLINEばかりして目の前の人たちを見ようとしない主人公の閉じられ方を通して他者理解について描いたり、ディレクターや主人公が薄っぺらい仕事で忙殺されて心が死んでたり、東日本大震災を想起させるシーンがあったり、現実的で凄く刺さるところが多いけど、サスペンス映画みたいなスリルがありミュージカルでもある。そして、脆弱で浅はかにも、何かに取り憑かれているようにズンズン進んで不気味にも、華奢でかわいく美しくも見える前田敦子も面白い。
これからも日本でこういう豊かな映画が作られますように。
自分物語と、周りの見えない危うさと、終わりなき旅と
僕たちの世界に蔓延してる危うさとは、このようなことかもしれない。
誇張された演出のテレビ番組を観て遠い国に思いを馳せ、街歩きガイドに従ってバザールに足を運んで、冒険してるようで、実はマニュアルに従っているのと同じだったりする。
「海外に行ったら、街のバザールに行ってみよう!その国の生活に触れることができるかも!」のようなやつだ。
そして、バザールを一目散に歩いても、実際に買い物をするのは、バザールの店じゃなくて、コンビニのようなショップだったり、いつのまにか、暗い道に迷い込んでバザールとは違う場所にいたり。
結局は、期待した感動や満足感とは程遠い。
毎日必死でインスタに自分物語をアップしてるのも同じだ。
今日は、レストランで、こんな食事食べましたとか、こんなイベントに参加しましたとか、実は、感動を伝える自分の言葉や表現力は不足していて、誰かがやり尽くした、事実を積み重ねるという作業を単に繰り返しているのだということに気が付きさえしないのだ。
注意を促す人の声に怯え、手を差し伸べてくれる人の親切を振り払い、自分物語を見栄え良く綴ろうとしても、空虚なだけだ。
家畜のヤギを野に放ち、あなたは自由よ!と言っても、もともと人に育てられたヤギは幸せなのだろうか。獣に怯えながら、生きて行くことになってもだ。
恋人からの電話に、「本当に、心配したんだから」と言うよりも、かける言葉は別にあるだろう。
結局は、周りが見えない、独りよがりなだけなのだ。
ウズベキスタンの緑の山でヤギを見つけて、あれは自分の野に放ったヤギに違いないと思い込んで、感動するのも同じことだ。
ウズベキスタンの青い空は、愛の讃歌の歌にあるように、決して落ちてなど来ないのだ。
こうした果てるともない長い旅が終わらないと、世界ははじまらないのかもしれない。
必死で頑張ってるのよと自身を鼓舞するのをちょっとの間でも止めてみて、少し立ち止まって、深呼吸でもしてみないと、本当の自分は、本当の自分の物語は見えてこないのかもしれない。
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